更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。ここでは、更年期の不調の軽減や病気予防に役立つセルフケア方法などを紹介します。
すべての画像を見る(全4枚)※ この記事は『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
女性ホルモンがなくなる!新たなライフステージへの心構えを
「更年期にはいずれ終わりが来る」と漫然と過ごしていませんか? たしかに、閉経の前後5年ずつ合計10年間を意味する期間としての「更年期」は必ず終了し、同時にその時期特有のつらい症状も治まります。
しかし、覚えておいてほしいのは、女性にとって本当の“試練”がやってくるのは更年期以降だということです。なぜなら閉経とともに女性ホルモン・エストロゲンの庇護がなくなり、動脈硬化や骨粗しょう症など健康寿命にかかわるさまざまなリスクが高まるからです。
●「エストロゲン」は体全体をサポートする重要な存在
初経から閉経までの約40年間、卵胞の発育や成熟にともなって体の中では上図のような変化が約28日周期で繰り返され、妊娠可能な状態がつくられます。
卵胞が成熟しはじめると卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され、子宮内膜が増殖して受精卵を迎える準備を整えます。排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を厚く保って受精卵が着床しやすい状態をつくり、体温も上昇。受精しないと子宮内膜は剥がれ落ち月経血となって排出され、再び妊娠のための準備がはじまります。
これに対し、「閉経」とは卵胞がなくなってホルモン分泌もなくなり、子宮内膜も基礎体温もフラットになること。月経困難症や月経前症候群(PMS)など月経がらみの症状がなくなる代わりに加齢現象がはじまります。
また、エストロゲンは基礎代謝を保ち、低体温を防いで免疫力を保つなど体全体にかかわる大きな働きをしており、各臓器にも作用しています。更年期以降の病気予防の点からとくに注目したいのは、高血圧、高血糖、高コレステロールを抑え、動脈硬化の進行を予防する働きがあること。エストロゲンによって骨量が保たれていることも重要です。