ひとり暮らしをしているなかでよぎる「将来や健康の不安」。そんなときは、考え込むよりもまずは暮らしのリズムを整えて、自分らしく過ごすのが大切かもしれません。今回は、現在60代の著述家、中道あんさんに、1年間のひとり暮らしをとおして気づいた、「心地よく過ごすひとり暮らしの基本」について話を聞きました。

中道あんさん
中道あんさん
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ひとり暮らしで気づいた「本当の自由」

ひとり暮らしを始めて、まもなく1年が経とうとしています。ふと気づいたら、引っ越してから元の自宅に一度も帰っていません。私が引っ越したあとの家は、長男がひとりで暮らしていました。

長年住み慣れた家でしたが、一度離れてしまえば、そこはもう息子の暮らす場所。不思議なほど、気持ちはあっさりときり替わっていきました。長男は奥さんを迎え入れ、文字どおり、私には「帰る家」がなくなりました。ひとりぼっちになった今は、愛犬がいちばんの親友です。

それでも私は、今、自分の人生をちゃんと生きている、という実感があります。

●ひとり暮らしの「魅力」と「注意点」

ひとり暮らしのいちばんの魅力は、やはり自由です。たとえ息子であっても、一緒に暮らしていれば、どこかで相手に気をつかうもの。ひとりで暮らすということは、生活のすべてを自分で決められるということです。

ただ、ひとりになってみて気づいたのは、自由とは、好き勝手に過ごすことではないということでした。だれにも注意されないからこそ、自分の行動が、そのまま自分に返ってくる。それを実感するようになりました。

食事をおろそかにしても、部屋が散らかっていても、カップラーメンですませても、だれにも迷惑はかかりません。でも、それが積み重なると、体調や気分に、じわじわと影響してくる。

50代をすぎてからは、「健康になる」よりも「不健康にならない」ことの方が大切だと感じています。

家族のためならできていたことを、今度は自分のためにやってあげる。自分が心地よく過ごせる暮らしを、自分の手で整えていく。それが、ひとり暮らしの基本なのかもしれません。

ひとり暮らしをして変わった「仕事との向き合い方」

屋外読書

わが家にはテレビは置いていません。家族から、テレビを買うことをすすめられたこともありました。ひとりだと退屈するだろうから、ネットフリックスやYouTubeを大画面で見たらいい、と。

けれど私は、仕事に夢中になる時間があり、正直なところ、退屈している暇はあまりありませんでした。むしろ、気づかないうちに仕事に根をつめすぎていたことに、ひとりになってから気づいたのです。

そこで、生活のリズムを意識するようになりました。次の4つがひとり暮らしを始めて、新たに取り入れた習慣です。

●生活を整えるために取り入れた「4つの習慣」

1.休日をきちんとつくること。

2.睡眠の質を上げるために、お風呂上がりのビールを控え、夜10時には寝る準備を始めること。

3.朝は犬の散歩をして、軽く体を動かす。

4.緑茶を丁寧にいれて、和食の朝ごはんをゆっくり噛(か)んで食べる。

仕事のために暮らしを犠牲にするのではなく、仕事と暮らしのバランスをとるでもなく、暮らしの一部として仕事をする。

そんな感覚に、少しずつ変わっていきました。