福岡で飼い主が出会ったのは、ちょっと変わった風貌の保護猫・もんた。多くの不安を抱えながらも引き取って始まった暮らしは、自然豊かな糸島での散歩や、そっと寄り添う時間に満ちていたそう。SNSへの投稿をきっかけに、多くの人に愛されてきたもんたと、飼い主。ここでは、一人と一匹の出会いについて紹介します。
※ この記事は『もんたのいた日常』(辰巳出版刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
すべての画像を見る(全5枚)2019年10月、もんたとの出会い
私がもんたと出会ったのは2019年10月12日、福岡市内で開かれていた保護猫の譲渡会だ。
保護当時の状況について保護主によると、もんたが母猫についていけずにはぐれているところを保護したとのこと。その猫は会場の別室でタオルで囲われたケージの中にいた。ケージのプレートには「名前 サラ 女の子」と書かれていた。
顔が映画グレムリンに出てくるギズモに似ていることから保護主からはギズモちゃんと呼ばれていた。なお、譲渡会直前にオスだと判明している。
独特な魅力をもつその猫に、ひと目で惹(ひ)きつけられた。しかし、引き取ることには慎重になった。ほかの猫とは違う見た目や、元気がなくケージの中で伏せてほとんど動かないことから、奇形や脳の障がいを疑ったからだ。
猫を飼ったことがない私にうまく育てられる自信はなく、引き取っても数日で死んでしまうのではないかと不安になり、ほかのだれかが引き取った方がいいのではないかと思った。
しかし、私はすでにその猫の虜(とりこ)になっていた。先天性の病気であれば、だれが引き取っても命の長さはそう変わらない、と自分に言い聞かせていることに気がついた。この猫のすべてを受け入れて、どんなに短い命だったとしてもよりよい一生にしてあげたい――なぜかそんな思いが私を捉え、引き取ることを決めた。