日々あわただしく暮らしていると、季節とともに移ろう自然の姿をすっかり忘れてしまう…という方もいるのではないでしょうか。そんなとき、「都会ほどの刺激がなくとも、自然の小さな変化が心地よくて心が躍る」と語るのは、栃木県の益子で55歳から69歳までカフェ「猫車」を営み現在はひとり暮らしをしている信田良枝さん。今回は、四季折々の自然を楽しみながら生きる、信田さんの暮らしの様子についてご紹介します。
すべての画像を見る(全5枚)自然を飾ると心が躍る
信田さんの家には、一年をとおして草花が飾ってあります。たとえば春はシロツメクサ、夏はツユクサ、秋はヒガンバナ、冬はネコジャラシ…。
「草花を飾ると、見慣れた部屋の空気がガラッと変わる。その感じがとても好きです。同じ季節でも植物は日に日に変化します。だから、リビングの同じ場所からながめていても飽きることはありません。
季節のしつらえを考えることも好きです。気楽なひとり暮らしですから、そのときの気分に合わせて、小物を出したりしまったり。夏なら風鈴やよしず、冬ならあったかグッズをいろいろとね。花を活ける器? 最近はなにも構えません。ただのあきビンや使っていないバスケットなんかを利用します。こだわりは、あえて言うならドイリー(レース編みの敷物)ですかね」(信田さん、以下同)
リビングの和箪笥にはハギレでつくった味のあるドイリーがたくさん。何枚か取り出し、全体の色や雰囲気に合う1枚をパッと選びました。
「よし、これでいいわね。遊んでいるように見えるかもしれないけれど、じつは真剣なの。だから、急かさないでね(笑)。だって、自分を感動させるために、やっているんだから」
ときには押し花づくりのために草花をつむことも。カヤツリグサ、ギボウシ、スミレ…。草花を板と板の間にはさんで重石をし、ひと月ほどプレスして押し花をつくります。
それを和紙にはり、板やフォトフレーム、木の皮シートなどに固定すれば、押し花アートの完成。壁や棚に飾るだけで、部屋に季節感が出ます。
「植物標本っぽい感じを出したかったので、植物名をアルファベットで書きました。知らない植物の名前をインターネットで調べるのも、楽しいひとときです」
あるときは、庭先で拾った木の枝をブローチにしようと思い立ちます。長さを適当にカットし、刺繍糸をぐるぐると巻きつけ、安全ピンをペタッ。枝の形はひとつとして同じものはなく、世界でひとつのアクセサリーができあがりました。
「季節の草花を活けたり、小枝のブローチをつくったり。自然が暮らしに変化をもたらしてくれて、いい気分転換になります。都会のような刺激が欲しいとは思いませんが、小さな変化に気づくと心が躍ります。これくらいが今の私には心地いいんです」