読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)の作者・菊池良さんがショートストーリーでお答えします。今回は一体どんな相談が届いているのでしょうか。

女性
新しいものに接する気力がわかない…なんてことはありませんか?
すべての画像を見る(全4枚)

 

こちらの記事もチェック

家にあるのを忘れて、同じ本やマンガを買ってしまう…じつは理由があったんです
タイトル

ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む“作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。

「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。

相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。

さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。

 

【今回の相談】おとなになってから、新しいものに接することが億劫になってしまいました

タコ

おとなになってから、新しいものに接することが億劫になってきました。配信サイトで映画を見るときも、新しいものでなく過去に見ておもしろかった映画を選んだりしてしまいます。どうやったら新しいものに興味が湧くでしょうか。

(PN.ブルーブルーさん

 

【作者さんの回答】無人島の海岸にはいろんなものが流れ着いてきます

作者

ブルーブルーさんは手紙を書き終えると、それをコーラのあきビンに入れて海へ流しました。ボトルメールです。いま、ブルーブルーさんは海岸にいて、そこから動けません。数日前からブルーブルーさんは無人島に流れ着き、そこで暮らすことになったのです。

この無人島の海岸には毎日、いろんなものが流れ着いてきます。ブルーブルーさんはその流れ着いてきたものを活用して生活していました。

今日は桃の缶詰が流れてきました。しかも、ゴミではなく、中身の入った缶詰です。ふつうなら大喜びするところですが、ブルーブルーさんは桃が苦手なのでした。あのみずみずしさが、逆にだめなのです。こどものころに一度食べたきり、ずっと避けてきたのです。だから、缶詰を目の前にして困ったなぁと立ち尽くしていました。

「朝食にはシリアルとかが流れてきてほしいなぁ…」

そのとき、ぐぅとおなかが鳴りました。ほかに食べるものはありません。缶詰をあけて、えいやっと口に入れました。もぐもぐと食べていきます。

「シリアルとはぜんぜん違うけど、なかなか悪くない。甘くておいしい」

そう言って、ぺろりと食べてしまいました。おなかがいっぱいになって、いい気分です。

 

●退屈しているブルーブルーさんのもとに流れてきたのは…

「なにかマンガでも読みたいなぁ。いろんなひとが謎のゲームに巻き込まれるような…」

ふともう一度海岸を見ると、なんと本が流れ着いています。びしょびしょですが、なんとか読めます。本の題名は『時代小説 織田信長の休日』。いろんなひとが謎のゲームに巻き込まれるような本ではありませんでした。しかも、小説です。ぱらぱらとめくると、どうやら織田信長が休日に釣りに行ったり、温泉に行ったりする小説のようです。手に汗握る合戦はまったく出てきません。

「そりゃ、織田信長にも休日はあるだろうけど…」

ブルーブルーさんは時代小説には興味ありませんが、しかたなく読みはじめます。すると、思いのほか、すいすいと読めてしまいました。気がつくと、あっという間に時間がたっています。ブルーブルーさんは本から顔をあげました。