画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(76歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしながら、月4万円の年金で生活しています。今回は、小笠原さんが考える、自分らしい年末の過ごし方について語ります。
すべての画像を見る(全5枚)ケーキやツリーがなくても楽しいクリスマス
私はクリスマスに、デコレーションケーキを食べません。もちろんひとり暮らしですからホールケーキは無理ですが、ケーキを食べなければなければならないという気分が重たく感じます。
それよりは上等なチョコレートをワインとともにひとつだけいただくとか、思いきり和風にして、練り切りなど上生菓子を漆器皿にのせ、窓の外の枯野を眺めながらいただくことが楽しくなってきました。たい焼きでもいいんですよ。
ツリーを飾ったりすることもありません。てっぺんにつける星は、イエスが生まれたとき東方の占星術学者が、星に導かれてイエスの下にやってきた印だそうですが、私は星のオーナメントを一年中飾って、いつもクリスマス気分です。
一年の終わりは、反省より喜びを感じたい
私は、年末に一年の反省はしません。ゼイゼイしながらたどり着いた大みそかは、それより喜びを感じることが大事で、実際は反省材料ばかりの一年を、わざわざほじくり返そうと思えないのです。
そんな私の年末は、年賀状を書くことと、来年の手帳に、今年の手帳から備忘録を転記することだけです。
76歳という高齢に達し日常的に脚腰が痛む私は、大掃除も大がかりなお片付けもしません。そもそも20代のころ実家を離れて以来、ひとり暮らしをするなかで、そういう一般行事はしてきませんでした。なにもしなくても気ぜわしい思いになる年末に、大掃除などはあまりしたくありません。
そのためには、「年末」という声を聴かないうちに、ボチボチといらないものを処分したり、部屋のすみっこを掃除する方が、先取感があるというものです。それでも「大掃除意識」は頭の片隅にあるので、大みそかはさりげなく周辺を整え、自分らしい正月を迎えてきたと思っています。
私は一日の始まりである「朝」が好きなので、単純に元旦が好きです。でもそこで一年の抱負などは考えたりしません。もう余生(文字通り余分な命)を送っているという実感があるので、迎える年も大いなる天の成り行きに任せたいと思います。
ただ元日はあまりデレッと過ごさず、「おごそかに」部屋を整えながら、気持よい一年の計を心がけたいと思っています。



