もうすぐ半袖の季節がやってきます。汗かきの女性にとって、「脇の下の汗ジミ」は切実な問題。
じつは今、日本初の保険適用塗り薬「エクロックゲル」が発売され、話題になっています。「井上メディカルクリニック」の井上憲先生にお話を伺い、実際に「エクロックゲル」を試してみました。
脇汗が多い「原発性腋窩多汗症」の症状と治療法について聞きました
脇汗が多いのは病気なの? 軽減する方法は? 井上先生に教えていただきます。
●Q1:そもそも脇汗が多いのは病気でしょうか?
脇汗をかくことは病気ではありませんが、日常生活に支障が出るほどの“病的”な量の汗は異常といえます。
これを「多汗症」といいます。汗は暑さや運動による体温上昇を下げ、熱を発散させる効果がありますが、多汗症で悩まれている人の中でもとくに脇の下や手のひら、額などに汗腺が密集している部位の多汗症の方は多くみられます。
男女比では同等といわれておりますが、日本人ではやや男性の方が多い印象です。明らかな原因が存在しない「原発性多汗症」と、なにかしらの病気や使用している薬剤が原因となる「続発性多汗症」に分けられます。
●Q2:脇汗を止める方法にはどんなものがありますか?
脇汗治療には以下のものがあります。
・注射薬(ボトックス注射)
・飲み薬
・手術
・その他(神経ブロック、レーザー治療、精神療法など)
塗り薬は、塩化アルミニウムなどを有効成分とする薬を直接脇の下に塗ります。
今回日本で初めて脇汗の塗り薬として認可されたものが、ソフプロニウム臭化物(エクロック)の「エクロックゲル」というものです。これは毎日塗り続けることで効果実感が増していく薬剤です。
●Q3:「エクロックゲル」とはどのような薬ですか?
前述したように、直接毎日脇の下にゲルを塗り続けることで効果実感を得ることができる、日本で初めての保険適応薬です。
脇汗の原因の一つであるエクリン汗腺の発汗を誘発する受容体をプロックすることで、発汗を抑制することができます。エクロックゲルを使用した人の70~80%の方が効果実感を得ているという臨床結果が出ています。
ただし、抗コリン作用があるため、閉塞隅角緑内障の方や前立腺肥大による排尿障害がある方は使用を控えていただきます。
保険適用できる脇汗用塗り薬「エクロックゲル」を実際に使ってみた
緊張すると脇の下に汗をかきやすいという悩みを持つ43歳の筆者も、「エクロックゲル」を処方してもらいました。
ちなみに、原発性腋窩多汗症の診断基準は、以下の6項目のうち2項目以上あてはまること。また明らかな原因のないまま6か月以上症状が続いていることとなります。
・左右でおなじように発汗がみられる
・睡眠中は発汗が止まっている
・1週間に1回以上多汗の症状がある
・家族にも同じ疾患の患者さんがいる
・脇汗によって日常生活に支障をきたしている
また、多汗症の重症度を表す「多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)」というものがあり、下記の3や4に当てはまる方が「エクロックゲル」の対象です。
スコア2:発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
スコア3:発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
スコア4:発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
●「エクロックゲル」の使い方はかなり簡単だった
使い方としては直接手で塗らず、キャップ部分のアプリケーターの上にワンプッシュ薬を出し、それを片脇に塗り、乾かします。
さらに1プッシュ出して反対の脇にも塗り乾かします。1日1回使用します。1日1回の塗布で1日効果が持続します。
もともとの価格は4874円ですが、保険適用(3割負担)で1462円でした。
「エクロックゲル」サラサラのゲル状の透明な液体で、少しアルコール消毒液のような匂いがします。
基本的には、使用開始後、6週間かけて徐々に効果を強く実感するものとのことですが、筆者の場合は左脇にだけつけてみたので、3時間後には左右の違いを感じました。
使用した日は雨で冬用のインナーを着用していたのですが、左側のみ、「汗をかかない状態」になり、じっとり汗をかいている右脇との差は歴然としていました。
●「エクロックゲル」と制汗剤を比べてみた
翌日は、右脇の下に市販の制汗剤を塗り、左にはエクロックゲルを使用。少し厚着をして自転車に乗ってみました。
制汗剤を塗った方は汗ジミになるほどではないもの「汗の上に粉を塗って抑えた」ような蒸れ感。
一方、エクロックゲルを塗った側は汗をかいていない状態でした。
ちなみに、添付後24時間以上経過した翌日は、どちらも同じ「汗かき具合」に戻りました。
●脇汗ジミも気になるけれど脇の臭いも心配
一般的に、多汗症に悩む人は、思春期から中年世代までの社会的活動が盛んな年代に多いといわれています。汗じみもさることながら、他人は指摘しにくい「脇の臭い」で迷惑をかけていないかどうかも気になるところ。
そんなお悩みを手軽に解決してくれるかもしれない「エクロックゲル」。気になる方は、医師に相談の上、活用してみてはいかがでしょうか?