スペイン人にとって食卓は「心を交わす場所」
すべての画像を見る(全2枚)食べること、話すこと、感じること、そのすべてを「急がない」「味わいつくす」姿勢だから、たとえ時計の針が進んでいても、今目の前にいる人との会話が終わらない限り、席を立たない。そこには「人を大切にする」文化が根づいているように思います。
この「食事に時間をかける」スタイルは、スペインの食文化を語る上で欠かせないものとなっています。
その背景のひとつに、「sobremesa(ソブレメサ、直訳は“テーブルの上”)」という言葉があります。これは、食後にすぐ立ち上がるのではなく、そのままテーブルに残って会話を楽しむという意味。
食後のコーヒーを片手に、家族や友人、ときには初対面の人とも心をゆるめて話すこの時間には、なにかを急かす空気がいっさいありません。テレビもスマホも脇に置き、目の前の相手にしっかりと意識を向ける。
そんなソブレメサの時間には、言葉のやりとりを超えた「つながり」が生まれます。たとえ会話の内容が特別でなくても、「今、ここに一緒にいる」という安心感が、心を満たしてくれるもの。スペインの人たちにとって、食卓とは「情報を交換する場」ではなく、「心を交わす場所」。
ソブレメサのひとときがあるからこそ、食事そのものが人生を整える時間として深まっているのだと思います。
ほかにも、『自由で、明るく笑って過ごす スペイン流 贅沢な暮らし』(大和出版刊)では、慌ただしく日本で過ごしていたRitaさんが、スペインで暮らして実感した、幸せに生きるヒントをたっぷり紹介しています。

