60代女性からの依頼:「孤独死」した母の部屋の片付け
依頼は、故人の家族や親族のほかにも、故人と縁があった方や、建物の管理人など多岐にわたります。そして、近年増えているのが「孤独死」に関するものなのだそう。
今回教えてくれたのは60代女性からの依頼。長年疎遠だった実母が孤独死したことを、警察からの連絡で初めて知ったというケースです。
「依頼者さまが実際に現場に到着すると、床にはコンビニ弁当の空き容器が散乱し、カーペットには蛆虫がわき、耐え難い異臭が充満していたそうです。あまりの凄惨さに、腰を抜かしてしまったとおっしゃっていました」
孤独死の場合、こうした想像を絶する現場も少なくありません。また、強烈なにおいの原因の1つが「排尿」の問題です。
「じつはトイレ以外の場所で排泄してしまう方も珍しくはありません。今回のケースでは、お母さまが高齢で足腰を悪くしたことが原因と考えられます。症状が悪化するにつれてトイレが間に合わなくなり、最初は尿パッド、次にペット用尿シート、そして新聞紙へと移行していったのではないでしょうか」
亡くなって初めて家族の状況を知るのは珍しくない
依頼者は、母親の強い自尊心を知っていたからこそ、変わり果てた部屋の様子に大きなショックを受けていたといいます。しかし、石田社長は「なんでも自分でできる人だった」からこそ助けを求められず心を閉ざしてしまったのではないかと推察。
「おそらくですが、子どもに排泄の世話をかけたくない、惨めな姿を見せたくない、困っていてもだれかにSOSを出すことをためらってしまう…そんな思いを抱えていたのではないでしょうか。そう考えてしまう気持ちも少し理解できますよね」
遺品整理の作業は1日もかからず終了し、この日回収したゴミは2トントラック2台分。突然のことに衝撃を受けていた依頼者も、遺品整理を通して気持ちの整理がつき、最後は感謝を述べていたそうです。
今回のケースのように、亡くなって初めて家族の状況を知ることは多く、「孤独死」という現代社会の抱える課題を浮き彫りにしています。だれにも頼ることができず、ひっそりと亡くなる…。
だからこそ、遺品整理は単なる片付けではなく、「家族」として最後のお別れをするための大切な時間であるのだと石田社長は教えてくれました。