マイナス金利で、住宅ローンや自動車ローンの金利が引き下げになったと、新聞やニュースなどでよく目にします。今、住宅ローンや自動車ローンを契約するとお得になる、などの噂が流れていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
また、家計がマイナス金利で得する影響はあるのかも気になるところです。ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんに、マイナス金利についてお聞きしました。
そもそも「マイナス金利」とはなに?
私たちが銀行にお金を預けると利子がプラスしてつきますよね。これを金利といいます。マイナス金利というのは、銀行にお金を預けると、利子を手数料として「払う」ことをいいます。
たとえば、2017年2月現在、大手銀行の定期預金の金利は0.01%前後なので、100万円を1年間預金すると100円の利子がつきます。しかし、これがマイナス金利になると、銀行に100円を払うことになります。これがマイナス金利です。
ただし、現在行われているマイナス金利政策とは、日本銀行と民間銀行との間でのこと。私たちが利用する預金にではありませんのでご安心を。マイナス金利の最大の目的は、民間銀行が、お金を日本銀行に預金するのではなく、民間への融資拡大につなげ、景気を活性化するためなのです
マイナス金利のなか、住宅購入はお得?
住宅ローンはこの一年で下がっていますが、2016年の首都圏のマンション販売戸数は前年比減の低水準になっています。その理由は、首都圏の物件価格の高止まりや、所得の伸び悩みなど。マイナス金利の影響はこれといってありません。
―今は住宅購入に踏み切り、住宅ローンを契約すべきとき、というわけではないのでしょうか?
住宅の買いどきは、自分が欲しいとき。住宅ローンの金利が低いからと買い急ぎ、その後、不動産価格が下落したら、結局は負の資産になってしまいます。ひと昔前のように、右肩上がりの経済成長が続いていく世の中ではないので、「とりあえず購入」という選択はおすすめできません
すでに住宅ローンと自動車ローンを契約している場合の影響は?
―マイナス金利の影響で、金利が下がっているという住宅ローンや自動車ローン。すでに契約している場合、借り換えで得するのでしょうか?
すでに住宅ローンがある人は、固定金利に借り換えることで、残債が圧縮できることもあるため、検討されたほうがいいと思います。自動車ローンについては、相対的には金利が下がっていますが、住宅ローンほど返済期間も金額も大きくないので、圧縮効果もそれほどではないと思います
マイナス金利のなか、今やっておくといいこと
―ところで、マイナス金利のなか、何か家計が得になることはあるのでしょうか?
マイナス金利での家計へのメリットは、残念ながらほぼありません。しかし、このような状況だからこそ、積極的に行えることもあります。
●預金している銀行を見直す
銀行によっては、ATMの手数料を見直したり、サービスを縮小してマイナス金利分の損失カバーをしたりしていることも。ネット銀行になると、金利水準は一般的な銀行の20倍以上のものもあります。給与振込口座にお金を預けっぱなしにしている人は、一度見直しをしてみるのにいい機会です
●ノーリスクな対策を行って足元を固めておく
たとえば、ふるさと納税による節税など、ノーリスクな対策を意識して行って足元を固めておくのもいいでしょう。10年後には団塊世代が後期高齢者になることから、医療費の高騰も考えられます。健康やスキルなど、盲点になりがちな自分の無形資産(物理的形状を持たない資産のこと)を積み上げていくことも重要です
まとめ
マイナス金利は、直接、家計に影響を及ぼすものではないようです。しかし、住宅ローンの借り換え、銀行の見直し、ノーリスクな対策などを行っておくのにはいい機会。一度検討してみてはいかがでしょうか。