約200種類以上におよぶと言われる更年期の不調。そう聞くと「なんだか怖い…」と思ってしまいますよね。でも、今はさまざまな治療法があり、自分に合ったものが見つかる可能性も高くなっているようです。そこで今回は、更年期の不調の治療法や選択肢について産婦人科医の粒来 拓(つぶらい・たく)先生に伺います。

医師に相談する女性
自分に合う更年期症状の治療法を選ぶには?(※画像はイメージです)
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更年期症状に困ったら…選べる主な治療法

更年期とは閉経をはさんだ前後5年、計10年の期間を指します。更年期に差しかかると、これまで女性の健康や美容を守っていた女性ホルモン・エストロゲンが減少し始めることで心身ともにゆらぎやすくなります。

このような更年期に起こる心身のゆらぎを「更年期症状」で、日常生活が立ち行かなくなるほどつらい症状があることを「更年期障害」といいます。

このゆらぎの波の大きさは個人差があるため「更年期になったら不安…」と思う人も少なくないと思います。しかし、今はさまざまな治療法があります。3つの治療法の選び方を知り、更年期とうまくつき合っていきましょう。

治療法その1:ホルモン補充療法(HRT)

ホルモン補充療法(HRT)
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更年期になると女性ホルモンはアップダウンを繰り返しながら徐々に減少し、やがて閉経を迎える頃にはほとんど分泌されなくなります。女性ホルモンは健康と美を維持する働きがあるため、減少にともない心身にはさまざまな不具合が出ます。

こうした女性ホルモンの減少による不調の波をゆるやかにするのが「ホルモン補充療法(以下、HRT)」です。減りゆく女性ホルモンをたすことで、ゆらぎの波をゆるやかにするものです。

HRTは女性ホルモンの減少にともなう不調を助けますが、とくに効果を発揮するのがホットフラッシュです。使い始めると比較的すぐにのぼせやほてり、多汗などが軽減できます。また、女性は年を重ねるごとに骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが高まりますが、HRTは骨量の維持を助けるというありがたい役割も。

そのほかにも寝つきがよくなる、更年期特有のイライラが落ち着く、肌のうるおいが維持されてかゆみが減ったり、美肌が保てたりという効果が期待できます。

●ホルモン治療のデメリットは?

窓を開ける女性
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婦人科のホルモン治療というと、低用量ピル(LEP/OC)を思い浮かべる人もいると思いますが、低用量ピルと比べるとHRTで用いる女性ホルモンはだいぶ少ない量といえます。「ホルモン剤ってなんだか怖い」「あまり気が進まない…」と思う人も、医師と相談のうえで検討したい治療法のひとつです。

以前は、HRTを服用すると乳がんのリスクが上がることがクローズアップされ、不安視する声も多かったと思います。しかし、乳がんのリスク上昇は少なく、最近ではHRTを使用している人と使用していない人で、差がほとんどないと言われている薬剤も選択肢として出てきました(ただし、治療中の人は服用不可)。

薬も日々進歩していて、有効性も安全性も向上しています。飲み薬だけではなく、パッチや塗り薬もあり、自分に適した方法で継続することができます。

●HRTが向いている人

・女性ホルモン減少にともなう、さまざまな不調を緩和したい
・ホットフラッシュによる、のぼぜ、ほてり、滝汗を改善したい
・骨粗しょう症を予防したい
・萎縮性膣炎、性交痛を和らげたい

●注意したい点

・閉経から年月(10年以上)経ってしまうと始めるのが難しい
・乳がんや子宮体がんの既往、心筋梗塞、動脈硬化、肥満傾向の人BMI25以上、治療中の病気がある人は服用の際に注意が必要