悪臭対策はもちろん、壁紙・床材をはり替えることも…
通常の遺品整理では、遺品の仕分けや片付け、搬出といった工程が中心ですが、特殊清掃の場合は、専門知識を持つスタッフが専用薬剤と機材を使い、異なる手順で清掃作業を行います。
「特殊清掃は、まず悪臭を取り除く作業から始まります。その際に使用されるのが、『オゾン脱臭機』という、悪臭の元を分解して消臭する専用の機器です。孤独死の現場では、脱臭機を24時間、1週間程度継続して稼働させなければ、部屋に入ることが困難なこともある。それくらい大変な状況なんですよね」
さらに、壁や床に体液や血液、あるいは腐敗物がしみ込んでしまった場合、通常の清掃では対応できません。そのため、床板をはがして除去するといった、より大規模な作業が必要になることもあります。
特殊清掃の費用は、小規模な汚れであれば数万円程度ですみますが、広範囲にわたる大がかりな作業や、臭気除去にオゾン脱臭機を使用する場合などは、結果として数十万円にまで膨らむことも少なくないそうです。
「おひとりで亡くなること自体は、だれにも避けられない場合があります。ただ、故人のためにも、そしてご遺族がスムーズに対応できるよう、なるべく早期発見につなげてもらえるとありがたいと思っています」
孤独死を防ぐために、今からできること
遺品整理プロスタッフへの依頼は、約7割が「親」の遺品整理。依頼理由はさまざまですが、なかでも「遠方に住んでいるため片付けが難しい」といったケースがとくに多いのだとか。そういった依頼人を数多く見てきたなかで、石田さんは「コミュニケーション」についてこう語ります。
「『なにかあったときにすぐに駆けつけられる距離』に住めることが理想ですが、それが難しい場合も少なくありません。そんなときは、『こまめな連絡』だけでも安心感につながります。また、仲のいいご近所さんや同じマンションの方と連絡を密にしておくことで、いざというときの助けになる可能性もありますよ」(石田さん)
「うちの親はまだまだ元気だから、放っておいても大丈夫」と思っていても、やはり突然なにが起こるかはわからないもの。数か月に一度しか連絡しないといった関係性のままでは、もしものときの対応ができなくなる可能性もあります。
「LINEスタンプを毎日1回送るだけでも、遠方からつながりを維持できます。また、最近ではさまざまな見守りサービスもありますよね。そういったものを調べてみて活用するのもひとつの手です」(石田さん)
孤独死はけっして他人事ではありません。今からできる対策を少しずつ始めておくことで、大切な人を守る準備ができるはずです。
※ 実際の体験をもとに、依頼者および遺品整理業者の許諾を得て制作しています。個人情報保護の観点から、登場人物や一部の状況は実際の事例を損なわない範囲で変更しています