年齢を重ねるにつれて、これまでしっくりきていた服や小物に、ふと違和感を覚えることはありませんか? かつては「似合っていた」ものが、ある日突然「なんだか老けて見える」と感じてしまう、そんな変化に戸惑うことも。今回は、グレイヘア歴10年のデザイナー・江面旨美さんに、自身の体験をとおして、大人になった今だからこそ楽しめるファッションとの向き合い方を語ってもらいました。着こなしの工夫から、靴選びのこだわりまで、年齢を味方にしたおしゃれのヒントがつまっています。
※ この記事は『75歳、心が弾めば人生は楽しい』(KADOKAWA刊)に掲載された内容を抜粋・再編集しています
すべての画像を見る(全6枚)似合わない…は、ある日突然やってくる
10年ほど前に、髪を染めなくなってから、ファッションが自由になりました。
紺白のボーダーシャツにジーンズスタイルも、無理して若ぶっちゃってなんて言われることもなくなりました。
年を上手に重ねていくとは、シワやたるみが出て老けていく自分に、おしゃれでどう抗うかだと思います。
40代までは、私も時代のトレンドを意識していました。モード系がはやれば、黒い長いスカートで闊歩したり、世のなかがエスニックに向かえば、そっち系のファッションを試してみたり。
アースカラーでマットで、いろんな色が複雑に入ったいい織りで、肩なんかピッピと張っていて、そんなスタイルが大人のいい女だと思いこみ、高いお金を出して買っていました。
ところがある日、突然やってきたのです。なにかおかしい、なにかが変だぞといういや~な感じ。
素材のよいゾロッとしたスカートは、たしかに体にしっくりくるのですが、しっくりしすぎてちょっとゆるんできた体型そのまんま。大好きだった藍染めのスカートも、履くとどこかに違和感があって気分が落ちる。つまり老けて見えるんです。
スカーフも、若さがあったからこそ映えたアースカラーが顔色をくすませる。
あせりました。そうか、好きだからって自分の姿をよく見てアップデートしていかないと、知らない間におばあちゃん路線に入っちゃうんだなと。
昔、シワ加工の服がはやったことがありました。母も好んで着ていたのですが、あるときこうつぶやいたんです。
「あらまあ、似合わないわねえ。顔がシワ加工だからかもねえ。顔がゆるんできたら、ピッとしたものを着なくちゃダメね」って。
大笑いしたけれど、これは核心を突いているなと思って、以来、私も心がけています。年齢がかさむほど、シャキッと元気に見える服を着ようと。