閉経の前後5年をはさんだ、計10年の「更年期」にさしかかると、女性は心身ともに不調を感じることも多いようです。でも、不調の波の大きさは個人差があるもの。「これくらいの不調で病院に行っていいもの?」と躊躇してしまうこともあります。病院にかかる基準とは? 女性のヘルスケアや更年期に詳しい産婦人科医の粒来 拓(つぶらい・たく)先生に伺いました。

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更年期症状、受診のタイミングや病院の選び方を解説(※画像はイメージです)
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少しでもつらい症状があれば、医師に相談を

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出典:小山嵩夫ほか「簡略更年期指数:SMI」(編集部にて一部文言改変)

更年期のセルフチェックに用いられる「簡略更年期指数(SMIスコア)」というものがあります。これは日本で最もメジャーなチェックテストで、わかりやすいので私のクリニックでも活用しています。

設問によって点数に差があるのは、(1)~(3)はホットフラッシュに代表されるような血管運動神経系症状で更年期によく見られるものだからです。

一方、(8)~(10)の頭痛、疲れ、肩こりは年齢問わず現代人はもち合わせているので、スコアは低めに設定されていると考えられます。

注目してほしいのは、スコアの合計よりも各症状の強さ、「強・中・弱」のレベルです。極端な例になりますが、項目のうち1個だけしか「強」がなく、あとは「弱」や「なし」でも、その1つの症状がとてもつらいとしたら、放っておいていいはずはありません。

実際には、更年期にまつわる症状は併存することがほとんどなので、症状が1つしかないのはまれです。複数の実際にはいくつかの症状が重なるため、合計スコアが高くなる傾向があります。

チェックテストは自己判断の指針にもなり、わかりやすいものですが、あくまでも目安。「困ったな」と思ったら、気楽に病院へ行きましょう。病院でも、「合計スコアが高ければ、更年期障害です」という診断にはなりません。

更年期障害とは、医学的には「生活に支障が出ている状況」のことを指すので、更年期の症状が出て困っているのなら、それはもう更年期障害です。

更年期症状が強く出る原因のひとつは「がんばりすぎ」

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※画像はイメージです

更年期症状が苦しくて私のクリニックを訪れる方は、やはりがんばり屋さんが多いです。がんばりすぎて、もうどうしようもなくなって、やっとのことで病院へ来た、という感じですね。

話を聞くと、仕事だけでなく、家族や子どものこと、親の介護などを優先して、不調があっても自分のことはあと回し…そんな人が多い印象です。

がんばりすぎている状況に体が悲鳴を上げるのが、更年期だと思います。もちろん、今のつらい症状が更年期によるものか、またはそのほかの病気なのか、いろいろな可能性を考える必要はありますが、「この症状は更年期かも?」と疑うのであれば、まずは気楽に婦人科の門を叩いてほしいですね。

問診してみて、うつ病の疑いがあれば、医師は心療内科の受診をすすめますし、心臓病の疑いがあれば循環器をおすすめします。「どこで相談したらいいの?」とひとりで悩んでいるくらいなら、病院で診てもらった方が安心だと思います。

ときどき、「こんな(軽い)症状で来てごめんなさい」とおっしゃる患者さんもいるのですが、まったく遠慮せずに相談してください。