女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地であるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は、白髪染めをやめて1年9か月経った現在の心境について。グレーヘアに移行中の川上さんが見つけた、年齢を重ねても「老け」ずに「すてき」でいるための秘訣を語ります。
すべての画像を見る(全6枚)フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと
うねる、広がる、ベタつく…夏の髪の悩み。グレーヘア移行中の憂うつな季節
ムシムシとした、日本独特の気候を感じる季節がやってきました。「発酵の国」ならではの湿度の高いこの時期。肌には悪くなさそうですが、とにかく髪の毛が悩みの種。これは年齢に関わらず、ほとんどの方が感じているストレスではないでしょうか。
私自身、思い起こせば朝シャンに明け暮れていた学生時代から、梅雨の時期の髪の毛にはいら立っていました。とくに猫っ毛で、微妙にくせのある髪質のため、広がるし、うねるし、ベタつくし…。
せっかくドライヤーでしっかりと引っぱりながらブローしたにも関わらず、一歩表に出た途端、モワーッと広がっていく感じが気持ちをズンと重くします。
さらに現在グレーヘアに移行中の私にとっては、憂うつ感満載の季節となっています。
白髪染めをやめて1年9か月、ようやくグレーの髪が増えてきて…
この秋には2年目を迎える、グレーヘアへのチャレンジ。今回はその現状報告を兼ねて、私自身が行っている対策を紹介したいと思います。
そもそも、「染めるのはいつでもできるのだから、とりあえず白髪染めをやめてみよう!」という軽い気持ちからスタートしたのが23年の10月頃となります。実際染めるのをやめてみると、思いのほか黒髪が多く残っていて、そう簡単には黒髪から美しい白へと移行できないことを実感。
「グレーヘア」というネーミングはいつ頃から耳にしていたか思い出せませんが、たしかに“グレー”とのつき合い方がポイントとなるのは間違いなさそうです。
役づくりで80代に挑戦!その後もグレーヘア続投を決意
ブリーチをして、おしゃれに乗り越える方法などもありますが私の場合、たまたま迷っていたときに都合よく(!?)50代から80代にかけてを演じる仕事が舞い込んできました。
そうとなれば、できる限り白髪を残し、地毛を生かして老け役に挑もうと考えました。その1つの対策として、髪の分け目を利用することに。左分けのときには黒髪が多く見えるように、表面だけヘアマニキュアなどでカバー。右分けにしたときには、白髪が目立つように一切手を加えないよう心がけてみました。
この対策は割合とうまくいったようで、先日80歳の役を撮影した際には白髪が大活躍をしてくれました。ひとつの着地点として目標としていた撮影が無事に終わったところではありますが、しばらくはこの手法を続けていこうかと思っています。
「老け見え」の正体は、髪の色ではなく「諦める心」
目的の仕事が終わったにも関わらず、すぐに黒髪に戻そうと思わなかった最大の理由は、この約2年間のチャレンジのなかで、老け込んで見せないために必要不可欠な条件は、髪の「色」よりも「ツヤ」であることを学んだからです。これがいちばん難しい…。
しかし、蒸し暑く煩わしいこの季節にハタと気がついたのです。
「老け込んで見えるのは容姿ではなく、諦めてしまう精神にある」ということ。そして、いかに自分が諦めることに慣れていたかを。