災害時に避難所で過ごすには、想像以上に厳しい現実が待っていることも。快適さを確保するための準備や、防災リュックに必須のアイテムとは? 看護師資格をもち、国内外30カ所以上の被災地で活動してきた国際災害レスキューナース・辻直美さんに、避難所のリアルな実態と備えのポイントを詳しく聞きました。
すべての画像を見る(全5枚)持病をもつ方やお子さんが優先されないことも。リアルな避難所事情
在宅避難ができない場合、避難所での生活を余儀なくされることもあります。しかし、ニュースで見る避難所の様子は、じつは安定した状況の一場面に過ぎないこともあるのだとか。辻さんは、「避難所に行くまでにはお作法があるんです」と語ります。
「まず、皆さんがイメージするような、揺れている最中にリュックを背負って慌てて逃げるという状況は、実際の災害ではほとんどありません。揺れが収まったあとに、家の中や外の安全状況を確認し、自宅での生活が困難だと判断した場合に、避難場所へ向かいます」(辻直美さん、以下同)
さらに、「ぜひ知っていただきたいのは、避難所と避難場所は異なるものだという点です」と続けます。
「避難場所は一時的に様子を見ることが目的で、広い公園などが指定されていることがほとんど。ハザードマップで事前に確認しておきましょう。火災の危険がある場合は『広域避難場所』へ、地震だけの場合は『一時避難場所』へ、防災リュックを持って行くことが大切です。避難所には欲しいものがすべてそろっているわけではないので、快適に過ごすための備えは自分自身で用意する必要があります」
●避難場所の実際の状況は?
避難所は、学校の体育館や公民館などが指定され、基本的には寝泊まりするだけの場所と考えおくのが基本。
「残念ながら避難所は早い者勝ちで、その地域に住んでいる人や、持病がある方、小さなお子さんがいる方が優先されるわけではありません。来た順番に案内され、場合によっては、あとから来た方が特別な配慮を受けられないこともあります。また、福祉避難所という、高齢者や妊産婦さん向けの避難所もありますが、数に限りがあり、必ず入れるわけではないので注意が必要です」
●避難所では「いかに快適に過ごせるか」を念頭に準備
避難所は、必ずしも安心安全が確保されているとは限りません。辻さんは「最低限ではなく、いかに快適に過ごせるかを目指して準備しましょう」と語ります。
「複数の避難所候補を事前に調べ、実際に歩いてみて、どのくらいの時間がかかるか、道は安全かなどを確認しておくことが重要です。行政の方がすべてを管理・運営してくれるわけではなく、避難者自身が協力して運営していくことになるということも覚えておいてください」
毛布や布団も、必ずしも十分な数が用意されているわけではありません。
「あったとしても快適とは限りません。周りの人の声が気になることもあるので、耳栓や枕なども自分で用意することをおすすめします。元気を取り戻し、日常に戻るためには、快適な環境が不可欠です」