お元気シニアの代表として、90歳になった現在でも団地でひとり暮らしを続ける多良美智子さん。ここでは、多良さんの著書「90年、無理をしない生き方」(すばる舎刊)から、多良さんが心地よい空間づくりにおいて習慣にしていることを抜粋してご紹介します。

多良美智子さん
団地で10年間ひとり暮らしをしている多良美智子さん(90歳)
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長い時間をかけて、築58年の団地を好みの空間に

家

家で過ごす時間が好きです。習い事など外出もしますが、基本は家にいます。編み物をしたり本を読んだり、趣味はひとりでできることばかりです。子どもの頃から内気で、友達と上手におしゃべりができないタイプだったので、家でひとりですることが好きでした。それは、今でも変わりません。

この部屋に越してきて60年近くなりますが、長い年月をかけて、自分の好きなものをそろえ、自分好みの空間にしてきました。夫が亡くなり、ひとり暮らしになってからは、ますます自分好みに。この部屋がどこよりも落ち着きます。好きなものに囲まれた空間で、好きなことに没頭できる時間は至福です。

吊り棚
夫が自作したつり棚。かつてはわが家の壁のあらゆるところにありました。今残しているのは数か所だけ

子どもたちが家にいた頃は、ものがあふれていました。床には置くところがないから、夫につり棚を壁につけてもらい、どうにか収納場所を増やしていました。昔のわが家を知っている人には、今でも「あの頃は荷物が多かったわよね」と言われます。子どもたちが巣立ち、少しずつ部屋を片づけていきました。

家族が多かったときは、少しでも部屋を広く使おうと、ダイニングテーブルは伸長式のものでした。普段はコンパクトに、食事のときだけテーブルの台を伸ばします。夫とふたり暮らしになり、以前より空間に余裕ができたので、ゆったりできる大きなダイニングテーブルに買い替えました。

ところが、「なにかに使えるかも」と古いテーブルが捨てられず、隣の部屋に置いておいたのです。そうしたら、その上にどんどんものがたまるようになってしまいました。

場所があるとものを置いてしまうと気がつき、思いきって、習い事の仲間に「欲しい人いる?」と聞いてみたら、もらってくれる人が現れました。捨てると思うと躊躇しますが、もらってくれる人がいると手放せるもの。それからは、処分できないものは、人に聞いてみるようになりました。

70歳頃から通い出した高齢者コミュニティには、食器や麻雀セットなどを持っていきました。利用者さんにもらってもらったり、そこで使ってもらったりしています。「もし残ったら処分して大丈夫」と伝えています。