忙しいと体を動かす機会が減ってしまいます。年齢を重ねて外出がおっくうになることも。「脳を老けさせないためには、歩くことが有効です」というのは、脳トレの第一人者でもある東北大学教授の川島隆太さん。詳しく伺いました。

しっかり歩いて認知症対策に
しっかり歩いて認知症対策に ※写真はイメージです。画像素材:PIXTA
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「歩く距離」と「歩数」は65歳から急激に減る

「『脳を老けさせない運動』と聞くと、特別な運動を思い浮かべるかもしれません。脳を活性化して、いきいきと働かせるのにはなにも特殊なエクササイズばかりではなく、まず『歩く』という、人間としてごく基本的な動きが大切なのです」と語る川島隆太さん。

厚生労働省のガイドでは、成人の場合は1日8000歩以上歩くことを推奨していますが、皆さんは普段どのくらい歩いているでしょうか?

「厚生労働省の『国民健康・栄養調査』という全国規模の健康統計調査によると、男性の1日の歩数の平均は約7200歩、女性は約6300歩。65歳以上になると歩数は少なくなっていき、都市部の男性の平均は約6100歩、女性は約5000歩、町村部に至っては男性が約5200歩、女性は約4400歩まで歩数が落ち込んでしまいます」(川島さん、以下同じ)

●65歳から歩数が減る原因

歩数は仕事をしているか、していないかによって差がつきやすく、65歳以上になると急激に歩行数が減るのは、仕事をやめ、家で過ごす時間が増えることも一因に考えられます。
65歳という年齢が、生活パターンに変化が生じるターンポイントであることがわかる結果ではないでしょうか。

「日々の歩行距離と認知症発症確率の関係について、ホノルル在住の日系人を調査した研究(※Abbott JAMA 2004より)をご紹介します。この研究では、1日平均で3.2km以上歩く人たちのアルツハイマー病発症数は、それ以下しか歩かない人たちと比較すると約40%程度低下していました。3.2kmは概ね4500歩強の距離です」