更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、更年期の動悸・息切れの要因や対処法などについて解説します。
すべての画像を見る(全4枚)エストロゲンが減ると増えてくる、女性の動悸・息切れ
激しく動いたわけでもないのに心臓がドキドキと強く、あるいは速く打つのを感じたり、息苦しくなったり。更年期を過ぎると何の前触れもなく動悸や息切れが起きることが増えてきます。また、心電図検査で不整脈が見つかり、ときどき脈が飛ぶのを自覚する人もいるでしょう。
心臓や呼吸は命に直結するものだけに少しの異変でも心配の種となりますが、重大な病気が隠れているケースはごくまれ。ほとんどの場合、女性ホルモン・エストロゲンの減少が自律神経の乱れを引き起こすために生じる更年期症状の1つと考えられ、ほかの不調を同時に併せ持つことが多くなります。
●病気を過度に心配するより生活習慣の見直しを
動悸・息切れを訴える女性の話を聞いてみると、明らかに精神的ストレスが要因と思われることが多く、じっくり話を聞いてもらうだけで気が楽になり症状が治まってくる人もいます。
また夜更かしや睡眠不足、不規則な食事など、生活習慣の乱れが自律神経のバランスを崩しているケースも最近増えています。まれに治療の必要な病気が隠れていることがあり、受診が必要な症状を見逃さないことも大事ですが、やはり基本は「生活習慣の見直し」。生活が整えばやがて、動悸・息切れだけでなく体全体の調子がよくなることを実感できるでしょう。
●まれに心臓や甲状腺、肺などの病気の可能性も
なかには心臓や甲状腺、肺などの病気の影響で動悸や息切れが生じていることがあります。
動悸・息切れの原因として考えられる主な病気としては、以下が考えられます。
・心臓の病気…発作性心房細動、上室性頻拍、微小血管狭心症、冠攣縮性狭心症
・甲状腺の病気…甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、甲状腺機能低下症(橋本病など)
・肺の病気…肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、自然気胸
・血液の病気…高度貧血
また、動悸・息切れに伴い以下の症状があるときは受診をおすすめします。
□咳や痰がおさまらない
□「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音がする
□体を少ししか動かしていないのにすぐに息が切れる
□呼吸がしにくい
□胸が痛い
□むくみがひどい
□倦怠感がある
□めまいやふらつきがある
□冷や汗が出る
□失神する
このような症状に思い当たるときや、生活習慣の改善や漢方薬でも一向に治まらない場合は受診して検査を受けましょう。また、徐脈と頻脈が長く続いたり、繰り返されるような不整脈のある場合も診察を受け、心臓の病気が隠れていないかを調べる必要があります。