画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(75歳)は、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。ここでは、小笠原さんの「今あるものを使いまわす」まさに“ケチじょうず”な生活について語ります。
すべての画像を見る(全5枚)ものを増やさない、買わない「ケチカロジー」な暮らし
私は、自身の節約生活を「ケチカロジー」と称しています。エコロジー(生態学)などをもじった造語で、「ケチ道」「ケチ学」のようなものです。そんな私はまぎれもない節約家ですが、所有欲も少ないので、特殊ケチかもしれません。
「ケチカロジー」は、ものへの執着を減らすということでもあります。たとえば私が衣食住に対する所有欲をあまりもたないのは、ものの少ない生活環境が清々しいからです。
と言いましても、3DKのわが家には、それなりの生活用具が収まっています。それでも年金生活に突入した10年前からはもう増やさない、買わないということを鉄則にしてきました。それは月々の年金額がわずか4万円弱であり、なお健康上の理由で、パートなどで働くこともできないからです。
長年続けている「一日1000円生活」
私は「一日1000円生活」として、一週間分の7000円を財布代わりにしている近隣の銀行から毎週引き落とし、散歩を兼ねた買い物で、毎日1000円札を1枚だけ使うことを続けてきました。
1000円は主に食料品で、そのほかは電化製品が壊れたり、血圧計を買わなければならなくなったり、入院したりと大型出費が必要となれば、お財布代わりの銀行ではなく、少し遠くて意図的に行きにくくしている金融機関から引き落としをせざるを得ません。
ただし一年前から、買い物にも出にくい体力低下により、宅配による食料調達に変更しました。この注文費用は、これまでのところ一週間分で3000~5000円。つまり一日1000円以内で賄われています。
注文用のカタログでは、最初は欲しいものにどんどん印をつけ、気分だけを満喫させて、その後は何度も見直して絶対今必要かどうかチェックし、できる限り消去していきます。肝心なのは、それを「残念!」とは思わず、「減らせてよかった!」と思えるようになることだけです。