「老いはすべての人に訪れるもの。目をそらすか、向き合うかで違ってくる」というのは、デザイナー・人形作家など多方面で活躍する粟辻早重さん(90代)。ひとり暮らしで自由だからこそ、あえて心と体にルールを課し、ほどよい緊張感を楽しんでいるのだとか。そこで、充実した毎日を過ごす粟辻さんの習慣を紹介します。

※ この記事は『92歳、好き放題で幸せづくし』(KADOKAWA刊)に掲載された内容を一部抜粋・再編集して作成しています

背すじをシャンと伸ばして、元気に歩く自分でありたいと思っています
背すじをシャンと伸ばして、元気に歩く自分でありたいと思っています
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自分で自分の演出家になってみる

玄関にひとつ、リビングにひとつ、寝室にひとつ、ほぼ全身が映るサイズの鏡を置いています。もちろん、自分の姿を見るためです。

自分の見え方ってセルフイメージとは違うことがあるでしょう? だから鏡を身近に置いて、姿勢や服装などをチェックするようにしています。鏡に映った背中が丸まっているな、なんて感じると、無意識のうちに背筋を伸ばそうとするもの。次に鏡を見るときは、シャンとした姿勢になっていることが多いんです。

「今日やるべきこと」をつくると、やる気も出てくる

朝ごはんの定番はカステラと、娘が週に数回、つくって届けてくれる豆乳です
朝ごはんの定番はカステラと、娘が週に数回、つくって届けてくれる豆乳です

老いは、すべての人に訪れます。でも、目をそらすか、向き合うかで現れ方が違ってくるような気がします。私が心がけているのは、今の自分を知ること。そして、生活の中で緊張感をもつことです。

そのために意識しているのが、食事の時間を決めること。べつに「朝ごはんは必ず8時ぴったりに!」というレベルでこだわる必要はありません。でも、1日3回、ほぼ一定の時間に食事をつくって食べることは、生活リズムを整えるのに役立つんです。

●新たなやる気も湧いてくる

そしていちばん大切なのが、「今日するべきこと」を日々考え、実践することです。たとえば最近の私は「男の顔」をテーマにした展覧会の準備中なので、「今日は絶対にスケッチを2枚描く」などを目標にすることが多くなっています。

やるべきことがあるのは、緊張感を保つ最良の方法です。「描かなくちゃ」と思うことで集中力が高まるし、よい作品ができます。そして、よいものができたことでうれしくなって新たなやる気が湧いてくる! たとえば佐藤健さんがうまく描けると、次は藤井風さんを描きたくなる…なんて、よい循環が生まれるわけです。

ひとり暮らしこそ、時間の使い方が大切

なんとなくつくるより、「すき焼きをつくる」と決めてつくったほうが、おいしいし楽しい!
なんとなくつくるより、「すき焼きをつくる」と決めてつくったほうが、おいしいし楽しい!

もちろん、「今日するべきこと」は仕事でなくてもかまいません。私はこの前、スーパーで京ニンジンを見つけました。私が暮らす地域では、お正月以外の時期に売られているのは珍しいこと。迷わずカゴに入れ、自宅に戻りながらなにをつくろうか考えました。普通に煮るのはつまらないし、きれいな色も生かしたいし…。

少し迷った結果、ひらめいたのが、かき揚げです。そして翌日は、「夕食にかき揚げをつくる」が、私の「するべきこと」になるわけです。

●緊張感のある生活で、心も体もシャンとしていられる

ひとり暮らしだと、時間の使い方は自分次第です。気楽に過ごせるよさがある反面、どんどんルーズになってしまう可能性もあります。なんとなくテレビを眺めてぼんやり過ごす1日より、自分がしたいことをする1日のほうが充実しているし、満足感や楽しさも感じられます。そして、ちょっと緊張感のある生活を続けたほうが、心も体もシャンとしていられるんじゃないかな? とも思うのです。

だから私は、演出家になったつもりで、自分に「今日するべきこと」を課しています。もちろん、厳しすぎない程度にですけれど。