「ものの数にばかりに目を向けるのではなく、自分にとって心地よく管理できる適正量を見極めることを大切にしています」。そう語るのは、夫婦2人で築35年の賃貸マンションで、ものを厳選してすっきり暮らす、深尾双葉さん(41歳)。「ものが少ないと、家の空気は驚くほど澄んでいきます。掃除も片づけも楽になり、視界も心も広がっていく」と話す深尾さんが実践する、もちすぎず、心地よく暮らすための5つのルールをご紹介します。
すべての画像を見る(全6枚)1:欲しいと思ったときはすぐ購入しない
かつての私は、欲しいと感じた瞬間に、迷うことなく購入ボタンを押してしまうことがよ
くありました。とくに夜のオンラインショッピングは危険で、これもよい、あれも必要かもしれないと、直感だけで次々と買い物をしていました。
けれど、勢いに任せた買い物はあとになって、本当に必要だったのだろうかと問い返すこともしばしば。ものは増えるのに心の満足度は思うほど高くありませんでした。
そこで今は、欲しいと思った瞬間の衝動にすぐ従うのではなく、緊急性の高いものを除いて、いったん数日ほど寝かせ、落ち着いた状態で再び向き合うことにしています。時間をおくと、不思議と興味が薄れてしまうものがあったり、逆に、数日経っても心に残り続けるものがあったりします。その違いが、本当に必要なものを見極める助けになります。
必要性の高さ、代わりになるものの存在、価格とのバランス。時間を挟むことで、こうした判断がゆっくりと進められ、自分にとって価値あるものだけが手元に残るようになりました。衝動を静かに受け流し、一度距離をおくという小さな習慣が、暮らしを驚くほど軽やかにしてくれています。
2:もつ理由よりもたない理由を一度、考えてみる
なにかを手に入れようとするとき、人はつい、もつ理由を探してしまいます。私もかつては、便利そう、あれば安心、今だけ安いと、自分を納得させる言葉をいくつでも並べて、買い物を正当化していました。
振り返ってみると、もつ理由というのは際限なく生み出せてしまうものだと気がつきます。欲しい気持ちに少しでも寄り添おうとするから、理由はいくらでも見つかるのです。
そこで、もつ理由を探すのではなく、あえてもたない理由を考えてみることを習慣にしてみました。もたない理由に目を向けてみると、すでに似たものがある、スペースを圧迫しそう、使う場面が意外と限られている、お手入れが増えてしまうなど、これまで見えていなかった現実が、急にくっきりと浮かび上がってきます。その瞬間、買う必要があると思い込んでいた気持ちが和らぎ、冷静な判断が戻ってきます。
一度立ち止まり、もたない理由を静かに数えてみる。ただそれだけで、家にものを迎え入れる機会は驚くほど少なくなり、結果として暮らしの軽さや心の余白が守られていきます。私にとってこの逆の発想は、シンプルな暮らしに近づくための大切な知恵のひとつになりました。


