3:厳選したほんの少しの“とっておき”と暮らす

食器
料理に、お茶に、お酒に、何通りにも使える片口
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家の中をすべて見直してからというもの、私のもの選びは以前にも増してずっとシビアになりました。ほんの少しのいいなという直感だけでは、ものを迎え入れなくなりました。日常に置くものは、単なるかわいいや一瞬のときめきだけではなく、これから長い時間を共にできる存在であるかどうかを基準に考えるようになりました。

たとえば、食器ひとつを選ぶときでも、10年後も同じ気持ちで触れられるだろうか、20年経っても、飽きずに使い続けられるだろうか、経年で色や質感が変わっていく姿を、愛おしく感じられるだろうか、そんな問いを1つ1つ心のなかで確かめています。

ものの数は少なくても、とっておきが家にあるという安心感は大きく、暮らしの風景が美しくまとまっていくのを感じます。ほんの少しの選び抜いたものと暮らすという選択が、結果的に、心にも空間にも余白をもたらしてくれるのだと思います。

4:買う前に家のもので代用できないかを考えてみる

コーヒーサーバー
サーバーは計量カップ、コーヒーミルはキャンプ用品を兼用しています

暮らしのなかには、専用の道具と呼ばれるものがたくさんあります。けれど、そうした道具ほど出番は少なく、年に数回しか使わないのに、棚の奥で大きくスペースを占領してしまいます。

そこで私は、なにかを新たに買う前に、まずは家にあるもので代用できないかと考えるようになりました。すぐに購入するのではなく、ひとまず工夫してやってみることにしました。

たとえば、専用のキッチンツールが欲しくなったときも、まずは手持ちの道具で代わりに試してみる。収納用品が欲しくなっても、家にある箱や布を使ってみる。そうして1、2週間ほど生活してみると、意外とこれで十分だったと感じることが少なくありません。本当に新しい道具が必要なのかどうかは、暮らしのなかで使ってみてはじめてわかるものなのだと、何度も気づかされました。

ものを増やす前に工夫を重ねることは、空間を育てるような感覚に近いのかもしれません。

新しいものを迎え入れる前に、まずは家の中でできることを探してみる。それだけで、暮らしは驚くほど整い、ものに支配されない自由さが生まれていきます。

5:収納場所や収納道具を増やしすぎないようにする

台所
台所の収納棚は小さな物に変えてから、管理がとても楽になりました

ものが増えてしまう理由の1つに、しまう場所があるという安心感があります。かつてのわが家も、今よりずっと多くの家具が家じゅうを占領していました。

収納がたくさんあると、一見すると片付けが上手くいっているように思えてしまうのですが、実際には、あいているから入れてしまうという悪循環が生まれ、ものの量は増えるばかりでした。しまえるという安心は、ときにもちすぎを正当化してしまうのだと気がついたのは、家の見直しをしたときのことです。

勇気を出して、台所に置いていた大きな棚を2つ手放し、小ぶりの棚を1つだけ迎え入れることにしました。正直なところ、これで本当に収まるのだろうかと不安もありました。でも同時に、収納が減ることで、今あるものと真剣に向き合わざるを得なくなります。

結果として、小さめの棚1つで十分に収まり、暮らしは驚くほど軽くなりました。収納を増やすことは簡単ですが、減らすことは空間だけでなく心にも余白を生み出してくれます。ものの量を適正に保つためには、収納を無限に増やさないという小さな心がけが、大きな効果をもたらしてくれるのだと思います。