年を取るにつれて、若い頃は気にならなかった足腰の悩みが増えてきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。40代以上で「ひざと腰が痛い」と感じる方にとって、まずもっとも大切なことは、歩くことができるうちに、時間や距離にとらわれず、とにかく歩く習慣を身につけること。そして関節に優しい靴を選ぶことです。今回は、2万人以上の足をさわってきた、予約の取れない人気シューフィッター・佐藤靖青さんに、40代以上で「ひざと腰が痛い」と感じる方へおすすめの靴を教えてもらいました。

※ この記事は『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』(扶桑社刊)に掲載された内容を抜粋・再編集しています

※画像はイメージです。(画像素材:PIXTA、以下同)
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「横チャック靴」がおすすめできない理由

横チャック靴

現代でも多くのシニアは、通称「横チャック靴」と呼ばれるようなウォーキングシューズを選び、ショップでも必ずおすすめされています。しかし、街中で横チャック靴を見かけると、9割くらいの確率でチャックは開きっぱなし。そりゃそうです。小さいファスナーのつまみを引き上げるのは困難だからです。

「チャック=着脱しやすそう」というのは誤解です。かといってチャック全開で不安定な状態で歩行していると簡単に転びます。百歩譲ってきちんとチャックを閉めても、負荷が一点にかかり、本体より先に壊れます。靴選びを間違えるとすべて台無しになってしまいます。

1:60歳になったら、歩く習慣が身につくメレルの「ジャングルモック」

60歳を超えた方にまずお勧めなのは、世界で累計1700万足を売り上げたメレルのジャングルモック(1万5400円)です。仕事から旅行まで違和感なく使えて、なによりスリッポンなので履きやすく、玄関にあるだけで歩く習慣が身につきます。習慣づくりをジャマするいちばんのハードルは、じつは靴を履くことです。

シューフィッターの立場から言えば、ヒモを都度きっちり結んで歩くべきですが、ヒモそのものがシニアにとってはハードルです。しゃがんで、ヒモを解いて結ぶ時点で、もうすでに腰やひざが痛いわけで…。さっと履けることが、とにかく重要なのです。

ジャングルモックは、1998年に発売されて以降、マイナーチェンジを繰り返し、耐久性も抜群。毎日履いても5年以上はもちます。表面のピッグスエードレザーにはなめしの段階ではっ水加工がされ、雨や泥にも強い。意外と知られていないのがヒール内部のエアクッションです。踵骨(しょうこつ)の真下の内部にかなり大きめのオレンジ色の衝撃吸収材が仕込まれていて、これが効きます。近年ではより履きやすいハンズフリーのジャングルモック2.0というモデルも出ています。

私の父は60代の後半から80歳を超えた現在まで、20年近くこればかり履いていますが、体に目立ったトラブルもなく、北国の冬でもこれ一足でとおしていました。ABCマートなど量販店でいつでも入手できるのもうれしいところです。