政治的なキーワードとして注目を浴びた「年収の壁」。これが、令和7(2025)年度の税制改正で160万円に引き上げられました。この変更で「所得税控除が見直されて年収の壁のラインが緩和したことで、より働きやすい環境が整った」と語るのは、税理士で『年金生活者・定年退職者のためのかんたん確定申告 令和8年3月16日締切分』を監修した磯浩之さん。今回、今年の確定申告で適用スタートする新しいルールについて、磯さんに詳しく話を伺いました。
※ この記事は『知らないと損をする! 年金生活者・定年退職者のためのかんたん確定申告 令和8年3月16日締切分』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
すべての画像を見る(全3枚)ルール1:「基礎控除」の大幅引き上げ
1年間の収入が一定額を超えると、税金や社会保険料を負担しなければならなくなり、手取りが減ります。このボーダーラインを「年収の壁」といいます。
この「年収の壁」と呼ばれる非課税ラインや所得要件が、令和7(2025)年度の税制改正で引き上げられたことで、より働きやすい環境が整いました。
まずは、基礎控除の見直しから説明しましょう。
基礎控除とは、給与収入が2695万円以下のすべての納税者が受けられる控除です。基礎控除があることで、所得税額を計算するときに使用する課税所得額が低くなるので、所得税もその分抑えられます。
この基礎控除が、令和7(2025)年分から大幅に引き上げられました。以前までは一律で48万円でしたが、給与収入が200万3999円以下であれば95万円、それ以外は58万円となります。
ただし、令和7(2025)と令和8(2026)年の2年間は限定で控除額が上乗せされ、給与収入200万3999円以上850万円の場合は、63万〜88万円と、段階的に変わります。
基礎控除は給与所得者だけではなく、個人事業主やフリーランスにも適用されます。確定申告をする際は、自分の基礎控除がいくらになるかをしっかり確認してから記入する必要があります。
ルール2:「給与所得控除」の引き上げ
基礎控除とともに、「年収の壁」の引き上げの要因となったのが、「給与所得控除」の見直しです。
給与所得控除とは、すべての給与所得者が受けられる控除で、給与所得に対して一律の基準で適用されます。
給与所得控除額は、給与収入額に応じて段階的に増える仕組みになっていますが、今回の税制改正で変更になったのは、給与収入が190万円以下の人の控除額です。これまでは控除額が55万〜65万円だったものが、2025年分から一律で65万円に引き上げられました。
基礎控除と給与所得控除の引き上げにより、「103万円の壁」といわれていた年収の壁が、「160万円の壁」に引き上げられました。
簡単にいうと、今後は年収160万円までなら所得税がかからないということになり、パートやアルバイトで働く配偶者や子どもが扶養対象となる範囲が広がります。

