日本では「遅刻は失礼」という文化が根づいていますが、スペインではまた違う感覚があるそう。ここでは、53歳のときに単身でスペインに渡り、留学生として3年間を過ごしたRitaさんが、暮らしていくなかで気がついた、「スペイン人の時間に対する考え方」を紹介してくれました。

※この記事は『自由で、明るく笑って過ごす スペイン流 贅沢な暮らし』(大和出版刊)に掲載された内容を抜粋・再編集しています

時刻表
遅れても、大丈夫。きっと、そのうち来るから
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時刻表は、いつも参考程度

「スペインって、時間にルーズなんでしょ?」そんなふうに言われることがあります。

でも、実際に暮らしてみると、それはけっして「だらしなさ」ではなく、むしろ「優しさ」や「気配り」から生まれるものだと気づくようになりました。

友人宅に招かれるとき、ゲストが必ず10分以上遅れてくるのは、その家の人に「ゆっくり準備してね」という無言のメッセージ。到着を急がないことで、迎える側の緊張やあわただしさを和らげる。そんな心づかいが自然と息づいているのです。

日本なら「遅れるのは失礼」とされる場面が、スペインでは「早く行きすぎるほうが失礼」となることもあります。

私も最初の頃、約束の時間ぴったりに到着してしまい、友人に「あら、もう来ちゃったの? まだ準備ちゅうなの!」と笑われたことがありました。そのとき初めて「遅刻」ではなく「余白のある到着」が歓迎される文化があることを実感しました。

同じような感覚は、公共交通にも表れています。

電車が遅れても、だれも眉をひそめません。むしろ、「まあ仕方ないわね」「こんなに待たせるなんて、どこまで待たせるか楽しみだわ」と、待ち時間を笑いに変えてしまう人までいます。地下鉄やバスの時刻表にも「○時~○時は4~5分間隔」と書かれているだけで、分単位の正確さを求める人はいません。

「来た電車に乗る」「待ち時間も会話や日向ぼっこの時間にする」。多くの人がそんなスタンスで過ごしています。