時間の正確さより大切なこと

スペインの街並み
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最初のうちは、私は日本で身につけた「時間厳守」の感覚が抜けず、バスの遅れにイライラしたり、待ち合わせに遅れることに罪悪感を抱くこともありました。

でもある日、約束に少し遅れてきた友人が「ごめんね、途中でおいしそうなパン屋を見つけて寄っちゃったの」と言ったとき、周りの仲間は「いいじゃない! そのパン、あとで見せて!」と大盛り上がり。遅れたこと自体は問題にならず、むしろ「遅れた理由」が会話の種になっている。

その瞬間、時間の正確さよりも、「今を味わう豊かさ」にこそ重きが置かれているということを知りました。だから、遅れることも、予定通りに進まないことも、人生の一部として受け入れられます。

週末のテラス席では、グループで大笑いしながら食事を楽しむ姿。老夫婦がアイスクリームを丁寧に分け合う姿。そこに携帯を気にしている人はほとんどおらず、「時間をつぶす」のではなく「時間を味わう」ことが当たり前になっています。

人生は予定外も楽しい!

この「遅刻の文化」に身を委ねるうちに、私の中でも変化が生まれました。

以前の私は、予定どおりに進まない日を「失敗」と感じていましたが、今では「気分よく過ごせた日こそが成功」と思えるようになったのです。待ち時間はだれかと会話するきっかけになり、寄り道は新しい出会いや発見を運んできてくれる。

スペインでの生活を通じて、私は「遅れること」を悪とするのではなく、自然のリズムに寄り添う心地よさを知りました。急がなくても、日常はちゃんと続いていく。自分を責めず、相手も責めず、ただ「今、ここ」を大切にする。遅刻が許されるのではなく、遅刻すら「気配り」として受け止められる社会。

スペインの人たちは、時間を抱え込むのではなく、重ねるように生きています。そしてその姿は、私たちに「人生は予定外も楽しいよ」と教えてくれています。

ほかにも、『自由で、明るく笑って過ごす スペイン流 贅沢な暮らし』(大和出版刊)では、慌ただしく日本で過ごしていたRitaさんが、スペインで暮らして実感した、幸せに生きるヒントをたっぷり紹介しています。

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