ミニマルな暮らしを実現するには、家族の理解と協力が欠かせません。家族に、ものを減らすことを納得してもらうにはどうすればよいのでしょうか? 今回話を伺ったのは、40代で、夫と2人の子どもと4人暮らしのミニマリスト・おーちゃん。ミニマリストとなったきっかけは、移住先で起きたある出来事でした。心地よい暮らしをかなえるまでの葛藤と、家族とのルールについて話を伺いました。
すべての画像を見る(全5枚)東京から福岡へ移住。都市と田舎のバランスがちょうどよかった
おーちゃんは、東京郊外の地元で育ち、就職。しかし、都会特有の閉塞感に生きづらさを感じるようになったそうです。
「学校を卒業してからも、自分が卒園した幼稚園で就職して、ずっと地元で生活していたんです。ただ、当時から夫と子育ては地方でしたいねという話はしていて、就職を機に移住を考えたこともありました」(おーちゃん、以下同)
もともと移住に関心があったというおーちゃん。転機となったのは、ドラマの『あまちゃん』でした。
「あるとき、DVDを借りて観ていたら、夫が地方で暮らそうかと提案してくれて。私がずっと願っていたことを、夫が背中を押してくれました」
さまざまな候補地の中から、最終的に福岡を選んだおーちゃん。決め手は「都市と田舎のほどよいバランス」でした。
「夫婦で海が近いところに住みたいねと話していて、たどり着いたのが福岡です。福岡は都市と自然の距離が近いのが魅力。移住先で会社勤めをしたい夫のことも考えて、都市に近い地域を選びました。長く東京に住んでいた私たちにとって、いきなり田舎で暮らすのはリスクがあるなと思っていたので、そのバランスがちょうどよかったです。実際に移住してからは、時間がゆっくり流れているように感じます。クルマの免許も取得して、運転できるようになったことで行動範囲が広がりました」
コロナ&出産が転機に。わたしがミニマリストになった理由
福岡に順調に思えた福岡での暮らし。しかし、家を建てたタイミングで転機が訪れます。
「今の家を建てたのは、ちょうどコロナ禍で外出禁止令が出た頃です。さらに、外出禁止令の1週間前に2人目の子どもを出産して、これをきっかけに実の母との同居も始まりました。そんななか、子育てが大変で産後うつのような状態になってしまい、主人も母も気を使いながら過ごし、家族が家の中でなにも発散できない状況になってしまいました」
夢だったはずのマイホームが「閉じ込められる場所になってしまった」そう。いまは夫との関係も良好で、実母は家の近くでひとり暮らしを満喫しているそうですが、当時は「離婚の危機だった」と振り返ります。
「夫婦仲も母との関係も悪化して、すべてがうまくいかなくて。もうこの場所からいなくなりたい、と本気で思うくらい追いつめられていました」
どん底の精神状態のなか、ふと思い浮かんだある考えが、おーちゃんをミニマリストの道へ導いていきました。
「『もし明日私がこの場所からいなくなったら、家のなかに残した恥ずかしい思い出の品を見られてしまうかも』と思ったんです。変な顔で写っている写真や、恥ずかしい手紙、日記とか。だれにも見られたくないものを全部一気に捨てました。すると、少し気持ちが軽くなったんです。その後、同じような状況の人をYouTubeで探したら、ある子育て世代のミニマリストの方の動画にたどり着いて。その方に影響を受け、洗面所の下のものを一気に減らしてみたのが、本格的なミニマリストへのスタートでした」