画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(75歳)は、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。今回は、小笠原さんの服選びのモットーや、少数精鋭のアイテムを活かす工夫などについて語ります。

小笠原洋子さん
小笠原洋子さん(75歳)、服選びのモットーとは?
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長年にわたる「欲望と節約との闘い」の果てに

20代30代の頃は、私も衣類や服装への関心が強く、街を歩けば、自然と目を皿のようにして新しい洋服を探したものです。

もう半世紀も前のことですが、月々の衣料費は最低でも2~3万円くらい。生活費のなかで衣料費が占める割合は、今の私とは比べものにならないほど多かったと思います。しかし、ひと月分を使い果たすほどは、お金をかけないよう努めていました。

それでも欲望というのは底なしですから、関心があるものに対しては、それだけ出費に注意が必要ですよね。

●40代で衣類の量を見直し、厳選

小笠原洋子さん

ところで私は、衣類であれ雑貨であれ、生活の場にものを増やしたくないという願望も強かったので、いつも「これ以上買ってはいけない」とも思ってきました。しかしその思いと、ステキな洋服をショーウィンドウのなかに見つけたときに、それを欲しいと思う気持との闘いは、大変なものですよね。

私の場合は、ついにその葛藤をくり返すことに疲れたようです。40代で定職を退いたこともあって、次第に生活に余裕がなくなり、どうしても「増やすこと」を止めたい願望が、「ステキ」を手に入れる欲望に打ち勝たねばならなかったのです。

そこで私の場合は、いろいろ工夫をした末、安い家賃の住まいに転居。家具なども処分した狭い部屋で、タンスに収納しきれなくなった衣類を、目をつぶって捨てました。

持ち服をカード化し、着まわし力がアップ

手持ち服のカード化

重要なのは、捨てたその次。捨てても増やせば元も子もないからです。

まず「衣類整理」という、高校時代に習った方法で、手持ちの服をカード化したのです。各カードをコート・ジャケット・スーツ・ワンピース・セーター・カーディガンとベスト・スカートとスラックスなどに割り当て、それぞれの衣類がひと目でわかるよう、色や特徴、夏もの・冬ものなど情報を記していきました。

爾後の衣類増減を考慮し、書き換えしやすい鉛筆書きにして、廃棄したり増えたりしたときの修正をしやすくしました。今なら、パソコンに入力できますが、手持ち服を1枚ずつ目視しながら、メモを取るという分類作業には時間がかかりました。

ところがだんだんおもしろくなってきて、自分のワードローブを改めて見直す絶好の機会にもなったのです。カード化した結果、たとえば急なお呼ばれがあったときなど、タンスを引っかき回わさなくても、カードを見て着ていく服をラクに選べるようになりました。

また、書き出してみると、これだけ着るものがあるなら、買わずに着まわしができるような気がしました。それを楽しむのも、服を増やさないための一手ではないかと思ったのです。