ケンカになりそうな危うい火種は“文章”で残す

──人づきあいでお伺いしたいのですが、夫婦や子ども、実親などの近しい関係では、他人の場合に注意できることがうまくいかないこともありますよね。こういった近しい人との関係で“からまらない”ために、どのようなことを意識されていますか。

尾石:近しい相手との間には、関連する思い出や解釈がたくさんありますよね。だから、話しているうちにどんどん論点がズレる。たとえば、「A」という事象があったとしても、「本当はBだと思っているくせに」「前はCって言ったよね」なんて異なる解釈に着地してしまうことも。心の距離が近い、だからこそ夫婦でも親子でもからまりやすいんです。

そこでわが家では、火種になりそうな危うい内容については、LINEのメッセージ(文面)で伝えるように徹底しています。口頭で感情的に伝えても「でも君だってこうでしょう」となってしまうので、ひとまず文面で冷静に伝えるのが決まりです。

一方的に投げっぱなしにするのではなく、後々口頭でフォローすると解釈もズレにくくなります。…なんて言っていますが、私たち夫婦も過去には幾度となく衝突していて、15年という長い結婚生活のなかでちょうどいい塩梅を見つけただけ。各家庭における“伝え方の最適解”を見つけられるといいですね。

相手の違和感には“ユーモアのメガネ”をかける

──反対に、他者との接し方ではどうでしょう。SNS上で立場の異なる者同士での議論が話題になることも多いですが。

尾石:立場が違うものについて話すと、どうしても「よしあし」を決める二項対立になりやすいものです。でも、視点を変えてみるとどうでしょう。

たとえば、専業主婦と兼業主婦だったら、「女性」という共通の視座もありますよね。同じように、異なる立場の人と話すときにはその枠で議論する必要があるのかをまず考え、視座をズラすことで対話を生むように心がけています。

──攻撃ではなく、対話をするわけですね。

尾石:そうはいっても、人間だれしも違和感を覚える人っているじゃないですか。文脈や言葉遣い、会話のラリーなど、些細だけど自分だけが感じる「ん?」という違和感。その直感を無視する必要はなくて、会釈してさっとすれ違うように必要以上に交わらないようにすればいいと思うんです。

とはいえ大人になると、立場上どうしてもつき合わなければならない人もいるでしょう。そんなときは、相手に覚えた違和感をユーモアに変化するのも手です。

たとえば、自分が大事だと思うポイントを相手に「気にしすぎですよ」と流されたとき、私はすかさず“ユーモアのメガネ”をかけるんです。「そうね、あなたは気にしないからその寝癖なのよね」なんて。意識を少しズラすことで、感情も乱されなくなりますよ。

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