更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、主な更年期症状と、治療法・対処法を紹介します。

更年期症状のイメージ
主な更年期症状と、治療法・対処法を紹介。(※画像はイメージです)
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自律神経の乱れは全身にあらわれる

閉経に伴うエストロゲンの減少が及ぼす健康への影響は、心身の不調として自覚するいわゆる更年期症状と、骨や血管の老化のように自覚のないまま進み、年を重ねてから表に出てくる変化の2つに分けられます。

前者の自覚症状は時期が過ぎれば治まるものも多いのですが、10年にも及ぶ不調をただ我慢し続けるのはもったいないこと。ひと昔前と比べると治療法は格段に進歩し種類も増え、症状の程度や体質に合わせて選ぶことができます。主治医の指示のもと対処法・治療法を試してみましょう。

●自律神経の乱れで起きる更年期の体の不調

エストロゲンの減少によって生じる諸症状
エストロゲンの減少によって生じる諸症状(『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』より)

更年期の症状は上図のように広範囲に及ぶのが特徴で、主にエストロゲンの減少による「自律神経の乱れ」が原因で生じています。いったいなぜ更年期には、全身に多様な症状が、しかも一度に起こるのでしょうか。エストロゲンの減少と自律神経の関係に注目すると、その理由が見えてきます。

●エストロゲンの減少と自律神経

卵巣に向けてエストロゲンの分泌指令を出すのは脳の視床下部という場所です。更年期に卵巣機能が低下すると指令が来てもエストロゲンを分泌できず、視床下部は混乱して指令を乱発。視床下部の周辺にある自律神経の中枢も混乱の影響を受けてバランスが乱れます。自律神経は体温、心拍数、発汗、血管の収縮・拡張など体全体の生命維持機能を担っているので、全身に症状があらわれるのです。