池松壮亮さんが主演、庵野秀明さんが監督・脚本を手がける3月公開の映画『シン・仮面ライダー』。石ノ森章太郎さん原作の特撮ドラマ「仮面ライダー」を、現代を舞台にキャラクターもストーリーも新たにアップデートした作品です。仮面ライダーとなる主人公・本郷猛を演じた池松さんは、どんな思いで撮影に挑んだのか。その心境を語っていただきました。

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池松壮亮さん
池松壮亮さん
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「ヒーローもひとりの人間。僕たちは常にヒーローやカリスマを求めてしまうけど、ヒーローにも人生がある。彼をちゃんと人間に戻してあげることが、僕が今回、仮面ライダーでやるべきことなんだと思いました」

仮面ライダーといえば、ヒーローの代表格。けれども、映画『シン・仮面ライダー』の主人公・本郷猛は、決して完璧ではなく、迷いや葛藤を抱えたヒーローなのだと、演じた池松壮亮さんは話します。

「ざっくり言ってしまうと“戦うことに葛藤する”仮面ライダーです。暴力でなにかを解決することも、したくない。仮面ライダーって何だろう? と考えたとき、大きく捉えると“昭和の夢”だったと思うんです。アントニオ猪木や力道山、ウルトラマンもそういう存在ですよね。この国の“夢”のようなものをどう引き継いで、どうアップデートさせるのか。あるいは、その夢を葬るのか。この作品は、そういうことを探求する旅だったな、と思います」

●オンライン面談で仮面ライダーが決まった

『シン・仮面ライダー』の原点は、1971年に誕生した、石ノ森章太郎さん原作の「仮面ライダー」。改造人間にされてしまった本郷猛が仮面ライダーとなり、悪の秘密結社ショッカーが送り出す怪人たちを倒していく…というストーリーが人気を集め、多くのシリーズがつくられてきました。今回の映画では『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』のヒットも記憶に新しい庵野秀明さんが監督・脚本を務め、現代を舞台に、仮面ライダーの新たな物語を生み出しています。

今作ではオーディションを経て、主演に抜擢されたという池松さん。オーディションが実施されると聞いて「やります」と即答したものの、その時期はちょうど映画の撮影のために、中国に滞在中。当時は海外からの帰国後に隔離期間が設けられていたため、その時間を使って、オンラインで庵野監督と面談することになったそう。

「正直、オンラインでちゃんと伝わるのかな? という不安もあったし、画面越しに『変身してみてください』とか言われたらどうしよう…と思って。なるべく小さい部屋でやりました。『ここだと変身する場所がないです』と答えようと思ってたんです(笑)。でもそんなことはなく、結果的にはオンラインで仮面ライダーが決まりました」

俳優として意識しているのは、日々ちゃんと感じて、ちゃんと生きること

池松壮亮さん

池松さんから見た庵野監督の現場は、「ほかの作品と比べて、なにもかもが違っていた」そう。たとえば撮影期間にしても、予定を大幅に超えて追加撮影し、ようやく今年1月に撮り終えたのだと話します。

「庵野さんの映画のつくり方は、僕がこれまで通ってきたものとはまったく違う。だとしても、いいものをつくり上げることがゴールですから、とことん最後まで、地獄の果てまでつき合おうと思っていました。今まで経験しなかった撮影方法によって新しい発見も沢山ありました。仮面ライダーのような特撮作品では、ライダーの衣装のときは、スーツアクターという専門の方が演じるのが主流なんです。でも今回は、変身したあとも、ほとんど自分で演じていて。仮面を着けて演じるのは初めての経験でしたが、顔や表情が見えないなかでの表現というものを考えるのがおもしろかったです。庵野監督は、『見えないところはいいや』というような妥協が一切ない人。妥協点の無さに驚くほどでした。“神は細部に宿る”と言いますが、今の現場で、そういうものづくりができることはめったにないので。長く果てしない旅ではありましたが、それを体験させてもらえてうれしかったです」