2作目は、漫画取り巻く人々を描いた味わい深い作品

●漫画を取り巻く人々の苦悩と哀愁を描く『東京ヒゴロ』

東京ヒゴロ』松本大洋/著 小学館刊(1)~(2)

漫画編集者の塩澤は、雑誌廃刊の責任をとり大手出版社を早期退職する。漫画と決別したはずだったが、あることをきっかけに自費で理想の漫画誌をつくることを決意。自分が信じる漫画家たちを訪ね、執筆を依頼していく。

東京ヒゴロ (1) (ビッグコミックススペシャル)

東京ヒゴロ (1) (ビッグコミックススペシャル)

大手出版社を早期退職した漫画編集者の塩澤。理想の漫画誌を作るため、自分が信じる漫画家たちを訪ね、執筆を依頼する。漫画を描く者、描かぬ者、描けぬ者、東京の空の下、それぞれの人生が交差する。

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●今もその教えを忘れない、ポニーキャニオン時代の恩人

廃刊の責任をとって大手出版社を辞めた漫画編集者が、自分の退職金をつぎ込み、もう一度自費で漫画雑誌を創刊させるという物語です。作家と編集者の関係が、リアルに描かれていてひじょうに興味深かったです。漫画家も担当編集者も人間ですから、相性というものがありますよね? それぞれの思惑が絡んだ人間模様のエピソードが秀逸で思わず引き込まれます。まだ1巻だけなのですが、主人公の作る漫画雑誌を読みたくなるようなコミックでした。

自分もミュージシャンとして長年やってきましたが僕の場合は、レコーディングディレクターが編集者ということになりますね。

これまで様々なディレクターと共に曲を作って来ましたが、中でもポニーキャニオン時代のTさんは僕にとっては恩人に当たります。二十代の頃、作詞の基本的概念を徹底的に叩き込まれました。今も行き詰まると、一歩引いて歌詞を見つめ直します。独りよがりの作品にはしたくない。すべてTさんの教えによるものです。(ESSE2022年8月号より抜粋)