甲状腺の病気のなかでも、とくに40代以降の女性に比較的多くみられるとされる「甲状腺眼症」(※1)を知っていますか? おもに同じ甲状腺の病気である「バセドウ病」に関連して発症することが多いとされており(※2)(※3)、ドライアイやアレルギー疾患、白内障などと症状が似ているため、区別が難しい場合も。病気の特徴や注意したいサイン、バセドウ病と更年期症状の共通点について、甲状腺専門医の吉原愛先生に伺いました。
40代からの「なんとなく不調」、更年期と思っていたら…
40代を過ぎると、「疲れやすい」「イライラする」「気分が落ち込みがち」など、いわゆる“なんとなく不調”を感じる方も増えてくるかもしれません。
こうした変化や不調を「更年期の始まりかな?」と思う人も少なくないようです。
しかし、「更年期障害が原因ではない可能性もあるので、注意が必要です」と吉原先生。
「以前より疲れやすくなった、階段を上るだけで動悸がする、食事量は変わらないのに体重が減る。あるいは、感情的になりやすい、集中力が続かないといった40代~50代でよく耳にする症状は、更年期障害以外でも起こります」(吉原先生、以下同)
さらに、「最近、目がやたら乾く」「目の奥が痛い」「まぶたがはれぼったい」といった目の症状も出ている場合、「意外な病気」が隠れている可能性もあるそう。
更年期障害と似ているけれど「バセドウ病」の可能性も
「バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう『甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)』を引き起こす自己免疫疾患です。甲状腺ホルモンは、体の代謝を活発にしたり、体温調節や心臓の働き、自律神経など、全身の機能に関わっています。ホルモンが過剰に分泌されると、全身が常に活動状態となり、さまざまな不調が現れます」
患者数は国内で人口1000人あたり0.2人~3.2人とされ、比較的若い層に多い一方、40~50代の女性で発症するケースも少なくありません(※4)。
バセドウ病の代表的な症状には、以下のようなものがあります。これらの症状は、更年期障害でもみられることがあるため、症状だけで区別することが難しい場合がある、と吉原先生はいいます。
【バセドウ病のおもな症状】
・動悸
・暑がり、汗かき
・息ぎれ
・疲れやすい・倦怠感
・体重減少
・手指の震え
・精神的なイライラ
・目が出てくる、二重に見えるなど様々な目の症状
・首の腫れ
「更年期のホットフラッシュや倦怠感、精神的なゆらぎと重なる部分が多く、見過ごされがちな症状も。しかし、甲状腺ホルモンの過剰な状態が続くことで、心臓や骨などに影響を及ぼすことがあり、適切な診断や治療につなげることが重要です。例えば、不整脈や骨粗鬆症のリスク上昇との関連が報告されています(※5)」
バセドウ病患者の2~3割が「甲状腺眼症」を発症(※6)
バセドウ病は全身に影響を及ぼす病気ですが、「甲状腺眼症」という合併症にも注意が必要、と吉原先生はいいます。
「バセドウ病と診断された患者さんのうち、甲状腺眼症を認める方は2~3割程度と報告されています(※6)。甲状腺眼症は、バセドウ病と関連する自己免疫学的な機序が関与すると考えられており、目の奥にある脂肪組織や眼球を動かす筋肉に炎症が生じることで、さまざまな目の症状が現れます」
甲状腺眼症は、バセドウ病の診断時だけでなく、診断前や治療経過中に認められることもあります。おもな症状には、眼の外見や見え方の変化に関連するものがあり、症状の程度によっては日常生活に支障を来す場合もあります。
●甲状腺眼症のおもな症状
甲状腺眼症の代表的な症状には以下のようなものがあります。
・眼の充血
・まぶたの腫れ
・眼の痛み・ゴロゴロ感
・過剰に涙が出る
・上眼瞼後退(まぶたがつり上がったように見え、白目の部分が通常よりも多く露出)
・眼球突出(目が飛び出ているように見える)
・ものが二重に見える
・視力低下・視野の欠け
これらの症状は見た目の変化だけでなく、見え方の変化によって車の運転や、読書、仕事などの日常生活に支障をきたす場合があります。また、症状による外見の変化が心理的な負担につながることもある、と吉原先生は語ります。
「甲状腺眼症は、40代以上の女性や喫煙者に多く見られることが報告されています(※1)。早期に症状に気づき、医師に相談することで、症状の進行や視機能への影響を軽減できる可能性があります」
早期発見が大切!「甲状腺眼症」チェックリスト
「疲れやすい」「気分の変化が気になる」といった症状や目の違和感の背景には、さまざまな原因が考えられます。その一つとして、甲状腺眼症が関係している場合もあります。
とくにバセドウ病の診断を受けている人や、眼の症状が気になる人は、以下のセルフチェックリストを参考にご自身の状態を確認してみましょう。
●「甲状腺眼症」チェックリスト
【過去3か月以内に以下の症状がありましたか?】
□眼が出てきている(眼球突出)
□白目が見えてきた(眼瞼後退)
【朝起きたときに以下の症状はありますか?】
□まぶたが腫れている
□眼が充血している
□眼の奥が痛む(眼窩の痛み)
□眼がゴロゴロする
□涙が出る
□眼が乾く
□光がまぶしく見える
□両目で、斜め上や左右を見たときに、物がダブって見える(※)
※片目で見てダブって見える場合は乱視の可能性もあるため、必ず両目で確認してください。視力の悪い人は眼鏡をかけた状態で確認してください。近くのものではなく、少し遠くのものを見てください(ドアの端、窓の桟、カレンダーなど)。
【眼の症状によって、以下の日常生活で難しさを感じることはありますか?】
□屋外を歩く
□階段を上り下りする
□車を運転する
□テレビを見る
□文章を読む
□料理をする
□仕事をする
気になる症状がある場合は、甲状腺内科や内分泌内科に相談を。バセドウ病と診断されている人は、主治医に甲状腺眼症の可能性も含めて相談してみるとよいでしょう。
提供:アムジェン株式会社 https://www.amgen.co.jp/
※ 1 日本甲状腺学会・日本内分泌学会 編集: 甲状腺眼症診療の手引き メディカルレビュー社, 2020
※ 2 Mamoojee Y, et al.: Graves’ Orbitopathy: A Multidisciplinary Approach - Questions and Answers. Basel, Karger, 2017; 93-104
※ 3 Lazarus JH: Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2012;26(3):273-279.
※ 4 バセドウ病|一般の皆様へ|日本内分泌学会
※ 5 Ross DS, et al. 2016 American Thyroid Association Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis. Thyroid. 2016;26:1343–1421.
※ 6 Watanabe N, Kozaki A, Inoue K, et al.
“Prevalence, Incidence, and Clinical Characteristics of Thyroid Eye Disease in Japan.” Journal of the Endocrine Society. 2024.




