不妊治療は日々進化し続けています。
今回は、まだ広く浸透していない最新の不妊治療法「着床前スクリーニング」「ミトコンドリア注入」について、不妊治療の専門家である杉山力一先生に伺いました。
不妊治療の技術が進化中。知識を蓄えて「いつか」の選択肢に加えましょう
すべての画像を見る(全2枚)●日本では試験的にスタートしたばかり「着床前スクリーニング」
日本では近年、一定の条件を満たす患者のみといった制限をつけて試験的に実施が可能となった「着床前スクリーニング(PGS)」についてお話します。
着床前スクリーニング(PGS)は、着床前診断(PGD)と同じ技術を用いて実施します。
着床前診断(PGD)とは、体外受精によって得られた胚の染色体数を、移植する前に調べてから、移植する胚を選択する検査です。着床前診断によって流産のリスクを減らすことができると期待されている治療法です。
対して、着床前スクリーニング(PGS)では染色体異常や性別についての検査も可能となるため、「生まれてくる命の選別になる」「倫理的な問題がある」といった考えもあり、長年日本での実施は見送られてきました。
しかし、成功の可能性が著しく低い異常のある胚を体内に戻しても着床しなかったり、着床した後に流産してしまったりする可能性も高く、母体への負担も大きくなります。
こうした不妊治療による心と身体の負担を減らせるというメリットや、どんな検査を受けても不妊の原因がわからない方々のニーズを受け、昨今では日本でも試験的に導入が始まっています。
●「ミトコンドリア」の注入で卵子を活性化
体外受精の際に、卵子の活性化に効果的な「ミトコンドリア」を精子とともに注入することで、卵子の発育を助け、妊娠に成功した、というケースもあります。
この治療法は海外で開発されたもので、日本で実施が認められたのは5年前と比較的新しい治療法です。そのため、この治療法を実施している病院は多くはありませんが、日本での妊娠成功例もたびたび報じられています。
人の身体の細胞ひとつひとつにミトコンドリアは存在していて、身体をつくり、動かす多くのエネルギーをつくりだすという大切な役割をしています。
卵子を成熟させ、精子の働きを活性化することにも、ミトコンドリアがつくるエネルギーが関係しているとされています。
これらのことから、ミトコンドリアを活性化すること、増やすことが、妊活に効果的とされているのです。
●不妊治療は日々進化しています
今回は新しい不妊治療技術についてご紹介しました。
まだまだ日本では、現時点では導入機関・事例ともに少ない方法ですが、これから研究が進み、日本でも新たな方法の導入も増えていくことでしょう。
ぜひ、たくさんの情報を取り入れていただきつつ、あなた自身の気持ちや考え方に基づき、パートナーやご家族、専門家とも相談しながら選択していってくださいね。