画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(77歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしながら、月4万円の年金で生活しています。今回は、小笠原さんが“今の生活”にフィットするように工夫しながら、大切に使っているものについて語ります。
すべての画像を見る(全5枚)両親が大切に使っていたものは今も現役
今夏77歳になったひとり暮らしの私は、少額年金受給者ですから、新品を次々買うことはしません。
そのため生活用品の多くは、家族の遺品です。遺品といえば大層ですが、私の大事な遺品はどれも雑貨にすぎません。
たとえば父の日曜大工用だったトンカチや、母が多めに買っておいたセロハンテープ、洗濯バサミからカッターまで。3~40年前の、亡き両親の所有物を使っています。
今の生活に合わせた“ひと工夫”も
実家の庭に捨てられていた遺品には、植木の細い添え木用の補助棒があります。それを小さな窓枠しかないアパートに住んだとき、物干し竿も設置できなかったので、そのか細い棒を物干しにしました。転居後も、その棒を窓際にぶら下げてタオルなどを干したり、その後もいろいろな場所で役立てました。今は風呂場の入口につるして、その前にある洗面所のハンドタオルをかけています。
またかつて実家で使ったインド製のマガジンラックは、私には無用の調度品でしたが、彫りが気に入っていて捨てられませんでした。そこでこれを解体し、二枚の彫刻板を飾り台にし、取っ手の部分は台所のふきんかけにしています。小さな廃材にすぎないのに、エキゾチックな芳香が、いまだ私を捉えて離しません。



