相続財産が一定額を超えると相続税がかかります。とはいえ、故人が残してくれた財産を有効に使うためにも、相続税はなるべく低く抑えたいものです。そこで大切となるのが、節税対策です。どのような対策があるのか、『一番わかりやすい【図解】相続&贈与のすべてわかる本 令和8年度改正対応版』(扶桑社刊)など、相続や老後のお金にまつわる書籍を多く監修している相続実務士の曽根恵子さんに伺いました。

※ この記事は『【図解】相続&贈与のすべてわかる本 令和8年度改正対応版』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

相続税の申告書
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贈与税がかからない範囲で毎年贈与する「暦年贈与」

暦年贈与イメージ
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相続税の節税対策として知られているのが、生前贈与です。文字どおり、生きているうちに財産の一部または全部を贈与することです。

しかし、なんの知識もなく贈与してしまうと、相続税よりも割高な贈与税を支払わなければならなくなります。制度を上手に活用することが節税対策では必要です。

節税対策としての生前贈与には、いくつかの方法があります。なかでも効果が高いものとして知られているのが、「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」です。

●暦年贈与は高齢の人には向いていない

まずは暦年贈与から説明していきましょう。暦年贈与とは、贈与税の非課税枠を使って、将来の相続人などに毎年贈与する方法です。贈与税は、1年間で110万円までの贈与なら非課税なので、毎年110万円ずつ生前贈与することで税金を支払わずに財産を分与することができます。

ただし、死亡7年前までの相続人に対する贈与は、相続税に加算して計算するというルールがあるので注意が必要です。

たとえば、死亡するまで10年間、毎年110万円を暦年贈与をした場合、4年目から10年目まで7年間の770万円が相続税の対象に。

したがって、暦年贈与は効果的な節税対策ではありますが、高齢の人には向いていないと言えます。

まとまったお金を贈与したいときに使える「相続時精算課税制度」

贈与税
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次に、相続時精算課税制度です。これは、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に贈与する場合、累計2500万円までは贈与税が非課税になり、相続時に相続税として計算する制度です。

こちらも贈与税の非課税枠を使えるので、毎年110万円までの贈与には贈与税も相続税もかかりません。

基本的に、贈与税より相続税のほうが税率は低いため、節税効果は高くなるケースが多い方法です。短期間で多額の財産を贈与したい人に向いています。

●贈与税の申告は必須

なお、相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与した翌年に税務署に贈与税の申告をして相続時精算課税届出書を添付する必要があります。

暦年贈与は非課税範囲であれば贈与税の申告は不要ですが、相続時精算課税制度は申告をして制度の適用によって贈与税がゼロになりますので、贈与税の申告は必須となります。

相続時精算課税制度を利用する際には、ルールをしっかり確認しておくことが大切です。