故人の残した品を整理する「遺品整理」は、時間と労力がかかる作業です。そのため、最近では専門の業者に依頼する方も増えています。そこで今回は、グループ合計で18万件もの片付けを実施してきた「遺品整理プロスタッフ」に取材。代表取締役社長・石田毅さんに実際にあった事例を教えてもらい、「遺品整理」の仕事のリアルに迫ります。
すべての画像を見る(全6枚)悲しみを抱える娘…孤独死した母の部屋の遺品整理
今回ご紹介するのは、長年疎遠だった実母が孤独死したことを、警察からの連絡で初めて知った60代女性のケースです。
遺品整理を専門業者に依頼する場合、多くは見積もり、契約、片付けという流れで進みます。今回も女性からのお問い合わせを受け、石田さんも見積もりのためにまずは現場に向かったそうです。
部屋に一歩足を踏み入れると、遺体はないものの、なんとも言えない強烈なにおい…。床にはコンビニ弁当のあき容器が散乱し、カーペットには虫がわき、ベッドには人型の痕跡が残っているなど、壮絶な状況が広がっていたのです。
●“できる人”だったからこその孤独
さらに、室内には尿パッドやペットシート、新聞紙があちこちに散乱し、すべてに排泄の痕跡が残されていました。じつは石田さんによると、排泄をトイレ以外でするいう状況も、けっして珍しいことではないそうです。
「依頼者が語っていたのは、お母さまが『なんでも自分でできる人だった』ということでした。きっと、子どもに世話をかけたくない、惨めな姿を見せたくないといった思いがあったのではないでしょうか。助けを求めることができず、心を閉ざしてしまう。そんな高齢者の心情は、共感できる部分があるような気がしますよね…」(石田さん、以下同)
石田さんは遺品の回収量をはじめ、部屋の広さや状態を細かくチェックし、見積もりを作成しました。提示された内容には依頼者も納得し、正式な契約を締結。後日、片付け作業を本格的に進める運びとなったのです。
依頼者の口からこぼれた、感謝と困惑の言葉
そして訪れた作業当日。複数人のスタッフが現地に入り、現金や権利書などの貴重品が紛れていないか慎重に確認しながら、必要なものと不要なものを選別していきます。
「形見分けの品や手元に残す品、不用品などに丁寧に仕分けながら、もし買取りできるものがあれば、作業費用からその分差し引かせていただく場合もあります。これらの作業を終え、はき掃除をしたら基本的な作業は終了。その後、依頼者の方に最終の確認を行っていただきます」
60代女性に作業終了の報告をすると、見違えるようにすっきりと片付いた部屋を目にし、しばらく呆然としたあと、安堵の表情を浮かべ、想像以上の仕上がりに感謝の言葉を述べられました。そして続けて、「じつの娘でもできなかった大変なことを、どうして他人なのにできるのでしょうか…?」と率直な疑問を投げかけられたそうです。