俳優、シンガーソングライターなど、たくさんの顔をもち、何色にも染まれる稀有(けう)な人、松下洸平さん。話題作への出演が続く忙しい日々のなかで大切にしている自分時間についてお聞きしました。

松下洸平
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松下洸平さんインタビュー「監督からの手紙に迷いなく出演を決断

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ノーベル賞作家カズオ・イシグロ原作の映画『遠い山なみの光』は、戦後まもない長崎で出会った2人の女性、悦子(広瀬すずさん)と佐知子(二階堂ふみさん)の交流を、イギリスで暮らす数十年後の悦子(吉田羊さん)の回想から描く作品。松下さんは、戦争から戻り悦子の夫となる二郎を演じます。

「石川慶監督から、『今回この作品をやるに当たってご一緒いただきたい』というとても丁寧なお手紙をいただき、悩むまでもなく、ぜひに、とお答えしました。同じく戦後の長崎を舞台にした『母と暮せば』という作品もご覧になっていただいたようで、今回の映画とリンクするところもあったのかなと。再び長崎弁でお芝居ができる喜びを感じながらも、またひとつ大きな課題をいただいたなと身が引き締まる思いでした」

二郎は心と体に傷を負いながらも無事生還。しかし、消化しきれない虚しさや苛立(いらだ)ちを、ときに家族に向けてしまいます。

「当時は、二郎のように戦後の日本でどう生きていこうか苦悩した方がたくさんいたのだろうと思います。彼は登場人物のなかで唯一、戦地を見てきた人間。激しい戦火の中に赴き、指をなくし、奇跡的に生きて帰ってきた二郎の言葉に、戦争体験者の重みや苦しみが託されていると思い、生半可な気持ちでは演じられないなと思いました」