日々の暮らしや仕事に追われるなか、「このままでいいのかな?」と、ふと立ち止まってしまうことはありませんか? 今回は、昨年刊行したエッセイ集『夢みるかかとにご飯つぶ』も話題のエッセイストの清繭子さん(43歳)に、夢をかなえるまでの道のりや、子育てと執筆を両立するなかで感じたことについて伺いました。

エッセイストの清繭子さん(撮影:武藤奈緒美)
エッセイストの清繭子さん(撮影:武藤奈緒美)
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40歳を前に会社員から作家へ。夢を追うと決めた理由

清さんと子ども
乳幼児を抱えながら会社退職、小説家の夢を追うことに

会社員として雑誌編集の仕事に打ちこみながらも、長年「小説家になりたい」という夢を抱いていた清さん。大好きだったという会社を辞め、フリーランスの道を選んだ背景には、ある大きな出来事があったと語ります。

「仕事はすごく楽しかったのですが、子どもを産んでからは仕事と子育てに追われ、小説を書く時間がまったくなくなってしまいました。このままでは『小説家になれなかったのは子どもを産んだせいだ』と、いつか子どものせいにしてしまうと思ったんです」(清さん、以下同)

そんなとき、心から尊敬していた編集者の先輩が急な病気で亡くなってしまう、という出来事が。

「先輩は編集の仕事が大好きで、たくさんの名書を世に送り出した方でした。ご家族も『やりきった、晴れやかな人生だった』とおっしゃっていて、それにくらべて言い訳ばかりしている自分はなんだろう、と。生きてるんだったら、やらなきゃダメだ。そう思って、先輩の訃報を聞いてから1週間後に、会社に退職を伝えました」

作家への近道?夢に近づくために意識したこと

作業中の清さん
執筆作業の様子(撮影:武藤奈緒美)

退職後はフリーランスのライターとして活動をスタート。小説の賞に応募するなど、継続的に執筆活動をされている清さん。自作の書籍化という夢を実現させるうえで、プラスに働いたと感じることはあるのでしょうか?

「私の場合は、ある編集者さんが、小説家を目指す日々をつづっていたnote『小説家になりたい人(自笑)日記』を読んでくださって、エッセイ集の出版につながりました。その編集者さんがnoteで見つけてくださらなかったら、エッセイストデビューはなかった話だと思います。なので、これから本を出したいと考えている方へのアドバイスとしては、『とにかく発信し続けること』がひとつ言えるかもしれません」

また、ネットに発表して反響を得たこと、つまり「たくさん打席に立つ機会を得られたこと」が、すごく力になったと感じている、と言います。

「最初は読まれるか不安でも、書き続けているうちに『こういう風に書けば読んでもらえるんだ』とか、『最初の導入で読者を引きつけた方がいいんだ』ということが、だんだんわかってくるんです。それが文章の訓練にもなっていたのかなと、今振り返ると思いますね」