青森県の津軽地方にある金木町に伝わるお菓子「笹餅」は餅生地を笹で包んで蒸し上げたもの。60歳から35年、すべて笹餅を手づくりをしてきた桑田ミサオさんは98歳。ミサオばあちゃんの笹餅は、またたく間においしいと評判に。そんなミサオばあちゃんの笹餅づくりを中心に回る日常と、込められた想いを聞きました。
すべての画像を見る(全12枚)納得できるまで5年。蒸しても青く、時間が経っても柔らかい評判の笹餅
「いまの自分があるのは、このたいした笹に恵まれたからなんだなって思うよ」。そう感謝の言葉を口にするミサオさんの笹餅は青く、清々しい笹の香りがほんのりとします。
笹は蒸気で茶色く変色し、餅は冷めるとかたくなります。もし、時間がたっても餅がやわらかく、笹の青さが保たれるようであったら…。そんな笹餅をつくりたいと考え、ミサオさんは小さなことを積み重ねながら試行をくり返します。
ようやく納得できるものをつくり上げるまでに約5年、その後も改良をし続け、おいしいと評判になり、店頭に並べるとすぐに売りきれてしまうほどの人気になっていきました。
「餅っこひとつで、こんなに喜んでくれるんだば、一生続けたい」
ミサオさんの日常はほぼ笹餅づくりに費やされています。
笹餅をつくるのは週2日、ほかは笹を採りに山に入り、小豆を煮てあんをつくり、もち米を粉にひくといった作業を行い、細かいところまで手間をかけるのでどうしても多くの時間が必要になるのです。
1日につくる笹餅は約400個。1組2個200円で販売し、その売り上げから材料費、光熱費、人件費を差し引いたら利益はごくわずか。
息子・清次さんはミサオさんの体を気遣い、「もうけになんねえべ。ずっと働いてきたんだから休めばいい」と声をかけますが「人が喜んでいるのを見れば、自分もうれしくなる。楽しみでやっているんだで、いいんだ」と。以来、じっと静かに見守る側に。