じゅうたんやカーペットのめくれを固定する
ケアマネジャーという仕事柄、私は介護サービスを受ける高齢者の自宅を定期的に訪問しています。その際、いやがおうでも気になるのが部屋に敷かれているじゅうたんやカーペットのめくれです。敷物のめくれに足を取られて転倒する事故は、頻繁に高齢者の家のなかで起きています。
敷物のめくれ対策には、裏側に貼るズレ防止のシートなども市販されています。でも、それだけで十分ではありません。長い鋲ピンや強力な両面テープなどで、しっかり固定する必要があります。
すべての画像を見る(全5枚)忘れがちなのは、玄関、キッチン、トイレ、脱衣所などに敷く小さなマットです。これらもめくれたり滑ったりするので、同様に両面テープなどで固定しましょう。
また、リビングや和室ではクッションや座布団もつまずく原因になります。もっといえば、床に置いた新聞や雑誌に足を乗せて滑って転倒する高齢者もいます。障害物となるものは親の生活動線上に置かない、置いても置きっぱなしにしないことを習慣にしてください。
つまずきそうな段差などに蓄光テープを貼る
屋内で高齢者が小さな段差につまずく原因は、足腰が弱ったことと同時に、視力の衰えによって足元が見えにくいことも考えられます。「ここの敷居に気をつけて」「ここから坂になっているよ」といった親への注意喚起は、危ない部分に蛍光テープを貼って“見える化”しましょう。
照明が消えると暗くなる場所の段差には、日中の明かりを蓄えて暗闇で光る蓄光テープを。少し値段は高くなりますが、高輝度タイプなら消灯してから6時間以上光り続けます。
廊下や階段、寝室などには、常夜灯を設置している住宅もあります。コンセントに直接差し込むタイプなら電源コードがありませんし、最近では明るさが段階的に調節できたり、おしゃれなデザインのものも多く出回っています。
「電気代がもったいない」と、親が常夜灯のスイッチをきってしまう場合は、人の動きに反応して光る人感センサーライトが便利です。生活動線上に設置し、人がとおるときだけ光る照明なら、節約を美徳とする世代の親にも喜ばれるはずです。
浴槽に滑り止めマットを敷く
家のなかでいちばん足を滑らせやすい場所は浴室です。高齢の親がいる世帯では洗い場には滑り止めマットを敷いていると思います。でも、それで安心はできません。
私がケアマネジャーとして担当した高齢者の例ですが、入浴中に滑って溺れかけた人がいました。浴槽の底は意外に滑りやすいのです。お湯から上がるときに足を滑らせる事故も数多く報告されています。滑り止めのマットは浴槽の底にも貼ってください(専用のマットが市販されています)。
浴室にも手すりがあるに越したことはないのですが、リフォームするとなると時間も費用もかかります。私がおすすめするのは、工事なしで浴槽の縁に取りつけられる浴槽用グリップ。この購入費は介護保険の適用にもなります。
設置を検討する場合は地域包括支援センターに相談すると、福祉用具の業者に浴室を点検してもらうこともできます。その際、入浴時の親の動作を見てもらい、浴槽用グリップなどの補助器具を最適な位置に取りつけてもらうといいでしょう。
今回は、転倒から身を守る対策について紹介しましたが、このほかにも、田中さんの新刊『親への小さな恩返し100リスト』(主婦と生活社刊)では、離れて暮らす高齢の親に幸せな晩年を送ってもらうために、家族ができることについて紹介しています。
※ この記事は『親への小さな恩返し100リスト』(主婦と生活社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
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