中村光宏アナウンサーが語る男子シングルの見どころ
すべての画像を見る(全15枚)男子は今回、新しいチャンピオンがだれになるかに注目です。現王者の宇野さんがプレ五輪シーズンに競技を離れて、やはり選手たちも燃えるものがあると思います。チャンピオンシップに向けての表彰台争いという中で、この一発勝負の全日本でどれだけ力を出しきれるか、レベルの高い勝負になると思います。
個別の選手でいうと、まず鍵山選手は4回転フリップなどのジャンプ構成はもちろん、フラメンコという新しい挑戦をしながら、カロリーナ・コストナーコーチとつくり上げる表現、滑りでどういう作品を作っていくのか楽しみです。優勝も狙って納得のいく演技をしたいと本人も以前話していたので注目です。
佐藤駿選手は今季、本人がいちばん進化を実感しているのではないかなと思います。これまではどうしてもジャンプの天才といった表現をしてしまいがちでしたが、それでは収まりきれない成長を見せていて、私もどう表現したらいいか悩ましいです。ギヨーム・シゼロンさんの振つけ、完成度の高い4回転ルッツを含めて滑り出しから楽しみですね。
三浦選手は体調面が心配されますが、難しい状況にあってもそれを気持ちとして演技に乗せられる選手だと思うので、どう本番にぶつけてくるか。NHK杯のお手洗いで三浦選手からループのコツを聞かれたという本田武史さんが解説をされるので、もし今大会で挑戦するならば、その解説も楽しみにしたいところです。
NHK杯といえば、壷井達也選手は4回転サルコウの安定感がすごかったです。去年の全日本は最終グループが神大会と言われていますが、じつは第3グループの壷井選手や吉岡希選手もすばらしかった。壷井選手の場合は今回もサルコウがポイントになってきますが、フリーで2本決まると引き込まれますね。
昨年3位だった山本草太選手は、全日本に向けての気持ちのつくり方や、練習の積み方といった部分ですごく手ごたえを感じたはず。ターニングポイントとなる大会だったのではないかと思います。昨年6位の友野選手も最終グループの第1滑走で神大会への流れをつくってくれました。友野選手も今年振付師を変えましたが、挑戦して必ず爪痕を残している選手です。年齢的にベテランの域にいると思いますが、多かった5位、6位の壁を打ち破ってほしいです。
●昨年のような“神大会”を今年も期待!
その他の注目ポイントとしては、西日本チャンピオンの織田信成さん。ショートは『マツケンサンバⅡ』で、しかも4回転+3回転を跳びますからね。織田さんがあれだけやる姿は、後輩たちに強いメッセージも与えているはず。4+3を決めて、これが個性だ! フィギュアスケートの楽しませ方だ! と、アイデンティティの最たるものを表現してくれることを期待しています。
また東日本チャンピオンの大島光翔選手は大学ラストイヤー。フリーはお父様の大島淳コーチがプロスケーターとして最後に演じた(『デスペラード』)を滑るので、特別な思いがあると思います。ぜひフリーも(後半グループに残って)実況させてほしいですね。
全日本選手権は選手たちにとって大きな意味を持つ大会。特有の緊張感が嫌いだという人もいますが、去年の全日本でいいイメージをもてて自信になった選手も多いと思うので、あのような神大会を今年も楽しみにしたいと思います。