外壁材や屋根材は、なにを使うかで、家の印象がガラリと変わります。ここでは、板張り、左官仕上げと大きな開口が目をひく家、焼杉とガルバリウム鋼板という異素材の組み合わせで生まれたナチュラルな家、木製格子や植栽とのハーモニーが印象的な家、磁器タイルや石貼りをバランスよく使ったモダンな家という、まったく異なる4つの事例を紹介します。それぞれ違って、どれもすてき。家づくりの参考に。
すべての画像を見る(全17枚)Case1.左官仕上げとレッドシダーを採用して植栽で優しい雰囲気を演出
Tさんの家 岐阜県 家族構成/夫37歳 妻37歳 長男8歳 二男6歳
設計/玉木直人(GA設計事務所)
Tさんの住まいは、大きな窓と吹き抜けを持つLDKが印象的です。「家族が集まり、毎日を楽しめる暮らしがしたい」という希望をカタチにしました。
キッチンは、リビングダイニングを見渡せるオープンスタイル。光と風を取り込む窓を東西に設け、それぞれに庭を配して、四季折々の自然を身近に感じる植栽を植えました。
住宅街の中で美しいたたずまいを見せるTさんの住まい。玄関までのアプローチも見事!
リビング横の西側には、ハンモックでくつろいだり、バーベキューを楽しんだりできる、庭とテラスを設けました。
素材重視の外観とともに、外構にもこだわった夫。塀はコンクリートに木目をつけるため、杉板本実型枠でつくり、シンボルツリーにはカマツカなどの植栽を配して彩りを。
道路に面する正面は素材感を重視して、左官仕上げとレッドシダーを採用しつつも、隣家に囲まれた三方は、ガルバリウム鋼板にしてコストバランスに配慮しました。
Case2.焼杉とガルバリウム鋼板の組み合わせて、ナチュラル&シャープなデザインに
Hさんの家 愛知県 家族構成/夫34歳 妻30歳
設計/悠らり建築事務所 撮影/桑田瑞穂
「私たちはものを多く持つタイプじゃないんです。人から見ればシンプルかもしれませんが、これで十分」と陶芸家の妻が語ると、その横でうなずく夫。そんな夫妻の人柄が伝わるような、温かみのある外観が印象的です。
玄関と工房スペースが並ぶファサードは、日本で昔から使われている焼杉を用いたナチュラルテイスト。焼杉は素材本来の素朴さも魅力ですが、耐久性があり、メンテナンスにも手がかからない点も魅力のひとつです。すすを落としているので暗くなりすぎず、落ち着いた印象となり、木製の玄関ドアや工房スペースのサッシともよくなじみます。
さらに工房スペースの奥に配した生活スペースの外壁は、シャープな印象のガルバリウム鋼板に。異なる素材を組み合わせてメリハリのある外観に仕上げています。
中庭から外観を眺めると、H邸の外壁が焼杉とガルバリウム鋼板で構成されているのがよくわかります。金属素材のガルバリウム鋼板も耐久性があり、メンテナンスがラクな外壁材です。
Case3.植栽と木製格子に包まれた外壁は、磁器タイルや石貼りをアクセントに
Yさんの家 神奈川県 家族構成/夫40代 妻30代
設計/井上玄(GENINOUE) 撮影/中村風詩人
Yさんのお宅は、正面の木製格子の内側には常緑樹を植えて、奥の北側テラスとダイニングを緑のカーテンで目隠し。閉鎖的な塀やフェンスとは違い、街に対してゆるくつながっています。木製格子の上部の外壁は、メンテナンスがラクな金属サイディング張り。
ギャラリーを兼ねた玄関土間。右側に見える壁は、1階の外壁に使用している窯業系平形スレート。外とのつながりを感じさせてくれる壁には、ロシアのイラストレーター、イリヤ・クブシノブさんの作品を飾っています。夜は奥の坪庭の木々をライトアップ。
常緑樹と木製格子を配した北側テラス。日差しが照りつける南庭よりも、安定した穏やかな光に包まれ心地よい場所です。「木製格子と植栽があるので、通りからの視線はまったく気になりません」と夫。趣味のキャンプ道具を出してバーベキューをすることも。
「緑を眺めるのは好きだけど、庭が草ボウボウになるのはちょっと…」と夫妻。そこで植栽の足元に砂利を敷き詰め、その周囲をタイル貼りにして、雑草を生えにくくしています。
北側テラスから外階段まで、木製格子をコの字型に囲むことで落ち着きが生まれ、奥にある玄関戸も外から見えにくくなりました。室内からは高木から中木、低木までの木々を楽しめます。
「外出・帰宅時の施錠ストレスをなくそうと、玄関には近づくと自動で開閉する引き戸を選びました」と夫。戸を開けた瞬間、正面奥のシマトネリコの緑に目を奪われドラマティックな効果が。
外壁材と建具、植栽が、見事なハモニーを奏でています。