市街地の一般的なサイズの家では、広いリビングにするのは難しく、大勢が座れるソファやイスはなかなか置けないことも。新築やリフォームに備えて「人が集まれるリビング」を検討しているなら、気軽に人が腰かけられる「段差」をプランに盛り込んでみましょう。アイデアあふれる「段差のあるリビング」プランについて、一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて、メリットを紹介します。
すべての画像を見る(全13枚)ベンチをL型に配したリビングの事例
ダイニングとリビングが連続したひとつ空間になっているお宅の事例です。ダイニングは天窓からの光に照らされ、一方リビングは南窓からの光が入る空間です。
リビングはソファセットと造作収納に囲われ、落ち着いたスペース。広いリビングではありませんが、普段、家族で過ごすには、ちょうどよいサイズです。じつは新居設計時に住まい手さんから伝えられたことが。
「年始には、毎年恒例で親せき一同が集まり、にぎやかに過ごします」
そこで、普段はジャマにならず、人が集まるときには大勢でも座れる、そんな工夫ができないか、と考えました。結果、造作ベンチを提案することに。部屋の南面から西面にかけてL字型に連続する、幅広の造作ベンチです。これだけの幅のベンチがあれば、何人もがゆったりと腰をかけてくつろげます。
バルコニーに出入りする窓は防水納まりの都合から、通常、床より少し上げて設置されます。そのため、またいで通ることになりますが、提案したベンチは、そこを出入りしやすくするための、1段のステップを兼ねています。
また、こうしたちょっとした段差は、座るにも意外と居心地がよいもの。ネコちゃんもお気に入りのスペースとなっています。
このベンチは部屋の南面から西面へとL型に連なり、階段の1段目も兼ねています。バルコニーへ出入りするためのステップや、階段の1段目という機能を兼ねることにより、幅広のベンチでも普段、ムダなスペースにならず、ジャマに見えないデザインとなっています。
ベンチの下にはカゴを入れて収納スペースに。リビングで手の届く位置にこうした収納があるのも便利です。
畳小上りの段差を生かした事例
次に紹介するお宅では、リビング全体が畳敷きの小上りに。ダイニングから2段(40cm)上がって畳リビングという構成です。
ダイニングと畳リビングとの段差には何人も腰かけることができ、ダイニングでの会話にも加わわれます。この段差には、ダイニングでイスに座っている人と、畳リビングで床に座っている人との目線の高さが合い、お互い会話がしやすくなる効果もあります。
さらに、畳リビングの奥には、もう一段小上りのニッチスペースが。こうした段差にも腰かけて、人が集まることができます。