●これからも和田さんの残したものと向き合い、新しい何かを探していきたい

平野レミさん
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――(和田さんの)もちものはいま、どんなふうに?

レミさん

:な~んにも手をつけていないの、まだ。私の荷物もいっぱいあるから、和田さんのクローゼットを少し空けてそこに入れようかとも思ったんだけれど、それってさ、和田さんがホントに死んじゃったみたいで、それはやっぱり嫌だなって。荷物の多い人だっただけに大変ではあるけれど、私にはまだできないわ。

ただね、作品とか職場のものに関しては思いきって整理を始めているの。和田さんって、今でいうマルチの走りというか、本当にいろいろやってきた人だから、たくさんのものが残っていて。まるで玉手箱みたいに次々と作品が出てくるのよ。こういうものは、ずっとずっと生き続けてほしいから、(和田さん出身の)多摩美術大学に寄贈したの。それで多摩美に見に行ったら、素手でふつうにさわっていたものも手袋つけてくださいって。靴脱いで入って白い手袋つけてしか見られなくなっちゃった(笑)。

――それだけ素晴らしい功績を残されたということですよね。

レミさん

:絵、文章、歌、映画や舞台監督、俳句、いろんな仕事してましたね。(和田さん監督の映画に主演した)真田広之くんもね、(訃報を聞いて)海外からすぐに駆けつけてくれて…。和田さんがたくさんの人に愛されているのをあらためて感じました。仕事に対して、美しいものに対して、本当にストイックだったから。

そういえば、仕事場から見つかった和田さんの日記にも驚かされたわ。17歳から19歳くらいのちょうど青春真っただ中の頃で、言ってみれば血気盛んな頃でしょ(笑)? エッチなことばかり書いてあるかしらと恐る恐る読んでみたのだけれど、まったくそんなことはなく、もう、映画の話でしょ、音楽の話でしょ、いろんな本の話でしょ、すっごいの。全部、全部キラキラした青春真っただ中の楽しい話ばっかりね。多摩美に合格したけれど、そんなことよりジェームス・スチュワート(裏窓などに出たアメリカの俳優)に出した手紙の返事が来たことが最高にうれしいとかさぁ。もう、いろんなことが書いてあってとにかくおもしろい。昔から和田さんは和田さんだったのよ。また惚れ直しちゃった(笑)。

これからも和田さんの新しい何かがきっと見つかるだろうし、ずっと探していきたいわ。皆さんにも、和田さんの仕事の軌跡をぜひ見てもらいたい。こう伝えることも今は私の生きがいのひとつ。和田さんが私にくれたプレゼントなのかもしれないなって。

【和田誠展のお知らせ】

会期/2021年10月9~12月19日
会場/東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間/11:00‐19:00(入場は18:30まで)
休館日/月曜日
入場料/一般1200[1000]円、大・高生800[600]円、中学生以下無料
※[ ]内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。

【平野レミさん】

料理愛好家・シャンソン歌手。明るく、自由なキャラクターとおおらかな料理が特徴で、テレビやラジオ等で活躍。夫は故・和田誠さん、長男のミュージシャン和田唱さんの妻は女優の上野樹里さん、次男の妻は料理家で食育インストラクターの和田明日香さん