季節の変わり目はいつも体調を崩しやすい…。そう自覚している人も多いのではないでしょうか?
その原因と、自分でできる対処法についてうつ専門メンタルコーチで、公認心理師の川本義巳さんに解説してもらいました。
寒くなるとメンタルを崩しやすい?この時季にうつっぽくなりやすい理由
「冬季うつ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 文字通り冬の季節にうつ病と同じ症状が出るというものです。うつ病との違いは「過食や過眠になりやすい」点と、春になれば症状が緩和するという点です。
この「冬季うつ」という言葉を聞くと、私は“早紀さん”というある女性のことを思い出します。
●「冬季うつ」って本当にあるの?とある女性の例
早紀さんは26歳。地方銀行に勤めています。職場での人間関係や、業務からくるプレッシャーで体調を崩し、24歳のとき「うつ病」と診断されました。それ以降、通院・投薬治療を続けながら、なんとか仕事を続けてきましたが、「やっぱり自分を変えないといけない!」そう思い立ち、10月の終わりのある日、私を訪ねてきてくれました。カウンセリングでは現在の自分についてこう話してくれました。
「薬のおかげか、最初のころのように大きく体調を崩すことはありません。でもなんとなく毎日スッキリしない感覚です。数か月に一度、どうしても起きられなくって仕事を2日~1週間くらいお休みすることがあります。やっぱり人とかかわるのが苦手で、すごく緊張しますし、仕事のストレスもあると思います。」
話から彼女がとてもマジメな人であることがわかりました。そして同時に繊細さも伝わってきました。
彼女は「もう3年近くこの状態が続いています。いい加減なんとかしたいのですが、お薬だけではダメなような気がして『自分を変えないといけない』と考えました。コーチングをお願いします」
彼女のその言葉に私は「わかりました。お受けします」と伝えました。すると彼女から「あ、ちょっと待ってください。私主治医から『あなたは冬季うつだ』と言われています。多分これから悪くなると思うので、来年からでもいいですか?」と言われました。少し不思議な感じもしましたが、彼女の言葉通りにすることになりました。
翌年の3月、彼女から電話がありコーチングを始めることになりました。最初に彼女から「やっぱりうつで仕事休んでいました」という言葉がありました。その後、コーチングは順調に進み、夏を過ぎるころにはすっかりと元気になっていました。その後彼女は、飲んでいた薬をすべてやめられるようになったのですが、それは12月の半ばのことでした。
「いつもなら調子が悪くなる時季に薬をやめられたことに驚きました。私、本当に冬季うつだったんでしょうか?」
そう彼女は笑顔でそう言いました。
●季節の変わり目にメンタルに影響を及ぼしやすい理由
冬季うつ(または季節性情動障害)は、実際に存在します。その原因は日光の量に関係していると言われ、日照時間の少ない冬場に起こりやすいとされています。早紀さんが冬季うつであったかどうか、それは私にはわかりません。ただ彼女は自分がうつ病であること、そしてそれは冬にかけて悪化することを確信していました。
じつは季節の変わり目にうつ症状になる人は多いです。とくに3~5月、10~12月に多く見られます。これは冬から春、秋から冬と季節の変わり目にあたるので、気温の変化が大きくなりそれに体がついていけないことで体調不良になっていきます。この「ついていけない」状態がメンタルにも大きく影響を及ぼします。私自身も昔から5月と10月は滅法弱かった記憶があります。うつ病で倒れたのも10月でした。
このように「冬季」という限定的なことではなく、季節の変わり目であったり、その人がもともと苦手にしている時期などもうつの原因になります。
ではこれに対してどう対処すればいいのでしょうか? まずやっていただきたいことは、「
これまでの自分を振り返って、1年を通して調子がよくない時季はいつだったか? を思い返してみる」という作業をしていただきたいと思います。あらかじめ自分が体調不良になりやすい時季を知っておくことで、その時季を無事にすごすための心の準備をするためです。
次にその時季になったとき「無理をせずやり過ごすこと」を意識するようにします。なるべく体力的に疲れないようにすることを心がけてください。その時季を家でゆっくりすごす時間を増やすというのも良いでしょう。「今の時季はあまり得意じゃないんだ」とわかっていれば、意識的にゆっくりすることもやりやすいと思います。
このようにうつには、仕事や人間関係のストレスだけでなく、季節要因も影響する場合があります。「とくにストレスや問題もないだけど最近なんだか調子悪いなあ」というときは季節要因が関係しているかもしれませんので、少しスローペースにするといいと思います。