日本最難関の大学である東京大学生の経歴を持つ著名人に、子どもの頃から今までに住んできた家の数々についてインタビュー。今回登場するのは、ファッションデザイナーの雪浦聖子さん。どんな環境で勉強していたかなど、東大生ならではの気になる点もお聞きします。
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転勤が多い家庭で育ち、過去15回の引っ越しを経験!思い出深いのは、初めて自分の部屋が持てた東京の団地雑音がないと集中できない?勉強はラジオを聴きながら家具選びは夫婦で一緒に、雑貨は雪浦さんが担当転勤が多い家庭で育ち、過去15回の引っ越しを経験!
「クリーン&ユーモア」をコンセプトに、グラフィカルなテキスタイルや風合いの違う素材をかけ合わせるなど、遊び心のある軽やかなデザインが注目されているファッションデザイナーの雪浦聖子さん。東京大学工学部卒業後、住宅設備メーカーのTOTOでの4年間の勤務を経て、まったく未経験だったファッションの道に進んだという異色の経歴の持ち主です。これまでに15回も引っ越しを経験するなど、家の経歴もまさに異色ずくめでした。
「父親が転勤の多い仕事に就いていたので、小学校を卒業するまでは社宅や団地を数年おきに転々としていましたね。北は宮城県から西は兵庫県まで、本当にいろいろなところで暮らしました」
当時住んでいた団地や社宅では同年代の子どもが多かったため、放課後はもっぱら友達の家に遊びに行ったり、友達が家に遊びに来たり、大きな敷地を目いっぱい使って鬼ごっこをして遊んでいたそうです。
中学生になるタイミングで、両親が兵庫・神戸の新興住宅地に一軒家を購入。
「それまで一軒家に縁がなかったから、初めて庭がある家を見たときにはテンションが上がりましたね。両親もはりきってカーテンを全部手づくりしたり、家具を買い替えたりして、かわいくしていた記憶があります」
その後東京大学入学を機に、実家を出て初めてのひとり暮らしを始めた雪浦さん。
「学生時代も、社会人になってからも、自分のブランドを立ち上げてからも、なんだかんだちょこちょこ引っ越しをしていて、結局今の家に住む30代前半までは引っ越しの連続でした」と笑います。
思い出深いのは、初めて自分の部屋が持てた東京の団地
中学生になるまで、2、3年おきに転居を繰り返していた雪浦さんですが、いちばん思い出深いのは初めて一戸建てに暮らした神戸の家ではなく、小学校低学年のときに暮らした東京・品川の団地だとか。
「初めて自分の部屋をもらったのがすごいうれしかったんですよね。弟と同じ部屋だったけど、ダイニングテーブルのお下がりを机にして、その上にペン立てとかの文房具類を自分なりに一生懸命几帳面にレイアウトして楽しんでました。自分だけの場所をつくるっていうことに情熱を注いでいましたね(笑)」
小学校の低学年くらいまではダイニングの隅っこで宿題をやったり、自室で勉強したりと半々の割合で、高学年くらいから自室で勉強するようになったそうです。
「中学生からは塾に通い始めて、それがすごい楽しかったですね。学校以外の友達ができて、みんなで切磋琢磨できる雰囲気があって。塾から帰ったら、塾で出された宿題を自分の部屋でやっていました」
子ども時代に過ごした家の数々
1歳までを過ごした埼玉・浦和の長屋。お宮参りの産着に包まれた雪浦さんと両親。
同じく浦和の長屋の庭にて。自然が身近に感じられる環境ですくすくと成長。
中学生になるタイミングで初めての一戸建て生活がスタート。カーテンやテーブルクロスはすべてお母さんのお手製!
雪浦さんにとって思い出深い品川の団地の間取り図。弟さんの机は対角に配置され、それぞれのスペースをしっかり確保。
雑音がないと集中できない?勉強はラジオを聴きながら
人によって勉強しやすい環境は違いますが、雪浦さんが自室で勉強する際、欠かせなかったのがラジオ。
「机のかたわらにラジカセを置いてラジオを聴きながら勉強していました。勉強に疲れたらラジオに耳を傾けて、勉強中はBGMのようにずっと流している感じ。雑音がないと集中できないタイプで、予備校生のときは、ファストフード店で勉強していました。お店にとっては迷惑ですよね(笑)」
大学生時代には、キャンパスに自転車で通える場所で念願のひとり暮らしをスタート。
「その当時はファッションも60、70年代っぽい古着とかアジアっぽいごてごてしたものが好きだったので、雑誌の切り抜きとか写真を壁一面に貼って、すごく視覚的にうるさい部屋に住んでました。家具やテレビも全部白く塗ったりして。そう思うと、今はずいぶんすっきりしましたね」
家具選びは夫婦で一緒に、雑貨は雪浦さんが担当
夫のたっての希望で、8年前に3階建て3LDKの家を購入した雪浦さん。日当たりのよさと緑道に面した立地が購入の決め手になりました。リビングダイニングは、小ぶりな家具が置かれすっきりとした印象。小窓や壁、スツールに置かれた植物や雑貨が彩りを添えています。
「家具はおもに夫の好みが反映されていますね。植物や雑貨は私の担当かな。家具は北欧やヨーロッパ、日本など国はバラバラですし、少し値の張るものからリーズナブルなものまでさまざまです。名作家具ばかりでしつらえたインテリアは自分にはかっこよすぎる気がして。整いすぎていないほうが落ち着きますね」
本当は大学で建築学科に進みたかったという雪浦さん。好きな建築家は、自然素材や植物を用いた建築で有名な藤森照信氏。夫と初めてのデートでは藤森氏の生家近くの神社を見に行ったり、新婚旅行ではスペイン・バルセロナのサグラダファミリアを訪れたりと夫婦揃って建築好きです。そんなふたりが自宅で改良しようと計画しているのが庭。
「ウッドデッキをつくろうって話していたんですが、それからかれこれ7、8年が経過。夫が自分でつくるつもりでいるので委ねていますが、いつ完成するやら(笑)」
雑貨が彩りを添えるミックスインテリア
現在の自宅のリビングダイニング。フィンランドの巨匠、アルヴァ・アアルトのラウンド型のダイニングテーブルは結婚当初から使っているお気に入り。
リビングの小窓やスツールには植物や雑貨がセンスよく並べられ、遊び心の感じられる空間に。
今春引っ越したばかりのアトリエショップ
アトリエで飼っているかわいいインコ。
昔から自転車で移動することの多い雪浦さん。今春オープンしたアトリエショップにも愛車で通勤中。
大きな窓から日が差し込む心地のいい空間にディスプレイされた新作コレクション。
●雪浦聖子さん/ファッションデザイナー
埼玉県出身。東京大学工学部卒業後、住宅設備メーカーに4年間勤務。 その後、ESMOD JAPONで服飾デザインとパターンを学ぶ。卒業後、YEAH RIGHT!! にてアシスタントを経験。 2009年に自身のブランド「snėėuw」を立ち上げる。今春、東京・世田谷区松原にアトリエショップをオープン
撮影/山川修一(本誌) ※情報は「リライフプラスvol.41」取材時のものです