●ホルモン受容性の乳がんだった私が、更年期障害でホルモン補充療法を…という不安
50歳くらいでもう一度、自然に更年期を迎えることはわかっていましたが、こんなに早く来るの!? と戦慄しました。
更年期症状でつらい場合、普通の人であれば女性ホルモンを補う治療やサプリメントでも対応できますが、ホルモン受容性の乳がんだった私は、女性ホルモンを補うことはできるだけ避けるように言われてきました。
そこでがん歴への影響が少ないと言われる漢方による治療も受けましたが、つらさは増すばかり…。
結局、何人ものがん専門医や婦人科医に話を聞き、ホルモン補充療法(HRT)に踏みきることにしました。
HRTは一般にもまだ理解が進んでおらず、さほど普及していませんし、閉経前にホルモン受容性の乳がんに罹患した人が、治療後にHRTをしたという特殊な場合のリスクや効果は普通に探してもなかなか見つかりません。
HRTをすることで再発リスクを上げてしまうのではという不安が大きかったのですが、複数の医師に現状のつらさを話しながら、がんの再発や発症するリスクなど教えてもらって勉強し、ようやく納得できて治療にたどり着いたのでした。
●右手で重いものを持たない、右側を下にして寝ない。死にものぐるいで身につけた「右側安静」のクセ
更年期障害の治療に入る前、さまざまな不調を診てもらうためにたくさんの病院に行きました。そのたびに乳がんという病歴があること、その治療内容や経過を説明しなければなりません。
正直、面倒くさいですし、ときには告知から治療の日々がフラッシュバックして苦しい気持ちになることもありました。
ちょっとした不便もけっこうあります。私は右乳房にがんができ、乳房温存手術とリンパ節への転移を調べるために、センチネルリンパ節生検という、リンパ節の一部を取って調べる検査をしています。14年前の時点では、主治医から、リンパ浮腫や細菌感染を起こさないように、術側(右)で重い荷物を持たない、寝るときには下にしない、注射や点滴は反対側の腕でと指導されました。
なので、重い荷物はすべて左肩に背負わせましたし、今でも体の右側を下にして寝るとハッとすることがあります。そのためか左肩が下がり気味で「それで肩凝りがひどくなるんだよ」と整体で言われたこともありますが、死にものぐるいで身につけたクセはなかなか直りません。
いちばん困ったのが、転んで左手首を骨折したとき。複雑骨折だったので金具で固定する必要があり手術をすることになったのですが、その準備で採血しようとして「あれ、左からできない!」と大慌て。
術後12年目でしたし、「普通の人と同じように暮らして下さい」とがんの主治医に言われていたのに、骨折の治療をする整形外科医からは「乳がんの主治医に確認してください」と言われ、急いで電話で聞きました。
もう右腕での採血や点滴も大丈夫でしょうという答えでしたが、整形外科では「念のために」とすべて足の甲から行うことに…。とくに点滴は歩きにくくて不便で、なんでこんなに苦労しなきゃいけないんだと落ち込んだりもしました。
この経験はすべてのサバイバーさんにあてはまるものではありませんが、私は「がんになってさえいなければ」と恨みがましく思ったのです。