SNSを開けば、ほしい情報がすぐ手に入る時代。それでも本には、ページをめくるからこそ出合える言葉や気づきがあります。この連載では、ライター・エッセイストの佐藤友美(さとゆみ)さんが、今読んでほしい一冊を紹介します。

スピノザの診察室
話題の小説『スピノザの診察室』

男も女も惚れる「マチ先生」とは

2026年初夏。私の周りで今、最もアツい男といえば、京都に住むという内科医・雄町哲郎(おまち てつろう)だと思う。通称、マチ先生だ。

マチ先生は、話題の小説『スピノザの診察室』の主人公である。大学病院でのキャリアを捨て、町の医者として地域の人々の健康に寄り添うマチ先生。訪問診療もするし、看取りもする。

この『スピノザの診察室』と続編『エピクロスの処方箋』を友人知人にすすめまくった結果、気づけば、私の周りはライバルだらけになってしまった。

「ヤバい、マチ先生のファンになってしまった」
「マチ先生に抱かれたい…というか、看取られたい」
「死亡診断書、書かれたい」

友人たちが口々に言う。ちなみに、抱かれたいとおっしゃったのは、50代の紳士だ。

女子トークの場では、

「でも、マチ先生に診察されるってことは、脱ぐわけだよね。ダイエットしなきゃ恥ずかしい」
「いや、入院する頃なら、それなりにやせてるのでは?」
「そうか。だったら安心か」
「え、私はもっと健康な時期に出会いたい!」

といった、ちょっとイッてる会話も交わされた。老若男女をとりこにしてしまうマチ先生、おそるべし。